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「嫌われない広告」の形とは?アドエクスペリエンスを考える

生活者が「広告」の裏側も理解する現在 広告会社で働くということ

常見陽平氏(千葉商科大学国際教養学部准教授)

若年層の“働き方”に対する意識も変化している中で、現在の広告業界は、学生たちにとってどのような存在なのか。働き方評論家であり、かつては広告会社への入社を志望していたという常見陽平氏が、現在の広告業界への就職志望事情について語る。

千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家
常見陽平氏

一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師(現:准教授)。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。

就職企業人気は大幅ランクダウン 学生は広告会社をどう見ている?

漫画『左ききのエレン』が大好きだ。かっぴー氏による広告、アートなどクリエイティブの世界に生きる人々の群像劇であり、私はこの作品を読むたびに、さらには仕事で広告業界関係者と会うたびに悔しくなる。「なぜ、私が、広告業界にいないのだろう」と。

学生時代、就活中の第一志望は博報堂だった。残念ながら入社に至らず、リクルートに就職した。それでも、広告業界で働く夢は消えず、『宣伝会議』や『広告批評』(マドラ出版 休刊)を読み漁った。これらを読んでいると、転職できると思ったからだった。ノートに「遅れてやってきた、広告界のイノベーター」と自分のコピーを書いた。顔から火が出そうなくらい、恥ずかしいエピソードである。

未だに「あの時、博報堂に入っていたら」と思うことがある。ただ、私が若い頃にあれだけ憧れた、人生の忘れ物のような広告業界は、現在は必ずしも人気業界とは言えない。

マイナビが2019年に発表した「大学生の就職企業人気ランキング」を見てみよう。

文系総合ランキングにおいて、電通は1990年卒で7位、2000年卒でも7位だったが、2010年卒で19位、2020年卒では49位(トップ30圏外)となっている。

博報堂は1990年卒、2000年卒で17位、2010年には博報堂/博報堂DYメディアパートナーズとして24位、2020年卒では37位である。新卒の就職人気企業ランキングは集計・発表する就職情報会社によって結果は異なり、未だに上位にランクインしていることもある。とはいえ、かつては人気業界だった広告会社の人気が落ちていることは明らかだ。

特に直近においては、広告会社をめぐる不祥事が影響していることは容易に想像できる。2015年に起こり、2016年に明るみに出た電通における過労自死事件と関連した同社の組織風土、体質に関する報道は特に影響を与えていると言えるだろう。さらには五輪関連で広告会社関係者が逮捕されるなど、業界イメージを下げかねない事件・事案も発生している。

今どきの若者とアラフィフの私ではもうひとつ、大きな違いがある。それは「広告」やその業界がキラキラした憧れの存在ではなく、「敵」であることだ。私は若い頃、広告を見るのが楽しみでしょうがなかった。番組の合間の一服の清涼剤だった。タレントのファッション、広がる光景...

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