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「嫌われない広告」の形とは?アドエクスペリエンスを考える

人の心に残り、誰かに伝えたくなる コアラスリープが目指す広告の理想形

尾澤恭子氏(コアラスリープジャパン)

1本のSNS投稿動画が怒涛のバズを生み、大躍進を遂げることにつながったオーストラリアマットレス界の風雲児、コアラスリープ。広告費の多寡によらず、人の心に残る広告をつくるには何に気をつけるべきなのか。同社の日本支社でマーケティングディレクターを務める尾澤恭子氏に話を聞いた。

コアメッセージが明確であれば顧客接点の変化に対応できる

コアラスリープは寝具・家具の開発および販売を行うオーストラリア発のベンチャー企業だ。2015年創業という業界内では後発ながら、オーストラリアのマットレス業界で急速にシェアを拡大し、目覚ましい成長を遂げている。

その日本支社である「コアラスリープジャパン」でマーケティングディレクターを務める尾澤恭子氏は、同社が本国オーストラリアで大成功を収めた経緯について、「多くの人に知られるきっかけとなったのは、SNSにアップした1本の動画でした。商品である『コアラマットレス』の上に赤ワインの入ったワイングラスを載せ、マットレスの上で創業者の2人が飛び跳ねてもグラスはピクリとも動かない。広告に割く資金がまだない中、このiPhone一台で撮ったクリエイティブが爆発的にヒットして、市場参入につながったのです」と話す。

人員も予算も確保しづらいベンチャー企業にとって、勝ち筋となるのは「スピード」だと尾澤氏は言う。同社でも自分たちでユニークなアイデアを出し、インハウスで迅速にコンテンツにして世に出すことを心がけているのだという。

「広告出稿においては、どの媒体に出すかを優先して考えがちですが、まずはコアとなるメッセージをつくった上で出稿先を考える。そうすれば、顧客接点やメディアが変わっても、消費者に同じメッセージ伝えることができます」。

ただ、同じメッセージでもメディア特性によって広告の受け止められ方は変わってくる。特に、デジタル広告はスキップされがちであるため、大事なメッセージは先に見せるなど、媒体ごとに構成を最適化させるよう気をつけているという。

テレビCMやOOHによる「偶発的な出会い」の重要性

時代の変化にともなって、生活者の広告の受け取り方にも変化が起きていると言われる現在。そうした傾向について、尾澤氏は次のように意見を述べる。

「消費者が以前と比較してテレビを見なくなっていますが、その事実をもってテレビCMは効果が弱いとは言えないと思っています。反対に、デジタル広告の勢いが増していると言われますが“商品との出会い”という点においては逆に幅が狭まっている気がしています。なぜなら、Webの検索結果から趣味嗜好が照会され、アルゴリズムがその人の好きそうな広告を導き出している。これは、触れられる広告の種類を狭めていることにもつながっています」。

そう考えると、デジタル広告は新規獲得につながる“偶発的な出会い”を届けるという点で弱いのではないかと尾澤氏は指摘する。だからこそ...

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