伴走型のコンサルティングサービスにより、企業のマーケティングDXをサポートしてきたSpeee。同社が提供する、業務効率化にとどまらない「事業の成長に寄与するDX」について、数多くの企業のDX支援を担ってきた大宮拓氏に思いを聞いた。
「顧客データ」を活用し まず何をすればいい?
ビジネスの急速なデジタル化が推進され始め早3年。多くの企業の関心を集めてきたのが「データを活用して顧客を理解する」ことだ。
クライアントのマーケティングDXを支援するSpeeeでPAAM事業 事業部長を務める大宮拓氏は、「ここ数年で顧客データの利活用に纏わる相談件数は増加。中でも、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を導入したが使い切れない、導入を考えているが導入プロセスが分からないといった相談が非常に多いです」と実情を説明する。
このような相談の背景には、データ活用ツールを扱うベンダーの急増によってCDP検討難易度が上がり、自社の目的に沿ったCDPの選択が難しくなっている状況があるという。
「日本の企業では専門性が必要な分野は社外のパートナーに頼るケースが多くなるため、データ活用といった専門的な知識が必要な案件を進める際に、自ら未経験の領域に対する解像度を上げながら取り組んでいく発想がなかなか生まれにくいように思います。ツールの増加により混乱が起こるのは、この気質も起因しているのではないでしょうか」。
しかし、時代の変化に伴って消費者をとらえることが難しい今、データにより顧客の行動や態度変容を明らかにし、顧客を理解すること、その理解を前提としたコミュニケーションをとることは必須課題だ。
「ユーザーの変化をとらえながら、対応していく。これこそ、マーケティングDXを推進すべき理由です。しかし外部パートナーへの委託に依存したままでは、社内に知見が溜まりません。今後、内部に推進するための体制や経験があることは大きなアドバンテージとなります」。
だからこそ、Speeeの支援は「インハウス化」が目指すゴールのひとつだと大宮氏は言う。マーケティングのDXを支援するその真意は、企業の本質的な事業成長にあるからだ。
特定のプロダクトに依存しない 柔軟なコンサルティングサービス
企業の本質的な事業成長に寄与するために同社が立ち上げたのが、データ活用コンサルティングサービス「PAAM(Predictive Analytics And Marketing)」だ。
「『PAAM』の特徴のひとつはベンダーフリーであるという点。特定のプロダクトに依存しないため、企業の目的や課題、予算に合わせて柔軟な組み合わせでツールを選定し、導入支援ができます。もうひとつは、“伴走型”である点。クライアントの要求をそのまま形にするというスタンスではなく、クライアントの企画や実行内容が目的やゴールに沿っていなければ、そのことをしっかりと伝えて軌道修正します。クライアント企業の社内に、ノウハウが蓄積されるようオンボーディングや業務フローの構築まで含めてサポートします」。
このような「PAAM」の全体構想に則り、同社が今年8月にリリースしたのが、CDPの導入から定着化までのプロセスを高速化する支援サービス「Quickwin CDP」だ。
「『Quickwin CDP』はGCP(Google Cloud Platform)、やAWS(Amazon Web Services)、などのツールを活用し、まずは簡易的にCDPを構築します。様々な機能を搭載するパッケージ型のCDPと違い、初期投資を抑えてプロジェクト開始までのプロセスを短縮可能です。さらに、システム構築以外にあたるデータ活用施策のプランニングや、業務プロセスの整備、プロジェクトマネジメントなどの周辺領域もサポートするのが特徴です」。
企業がCDPを導入する際に課題となりがちなのが、データの活用を具体的にイメージできていない状態でCDP導入を開始しようとするため、投資に見合う計画をつくれず、計画段階で足踏みするケースだという。
「最初から大掛かりな環境を構築するのではなく、まずは自社が持っているデータを使用して、できるだけ早く“顧客の見える化”を実現することが重要です。データで顧客を見える状態にしてからの方が『このような切り口で分析するともっと顧客のことが理解できるのではないか』などの意見が活発になり、施策の構想が広がります。そのため『Quickwin CDP』では、綿密な計画を練ってからCDPを構築するのではなく、逆転の発想でまずは簡易的に素早くCDPを立ち上げて、顧客理解と施策検証ができる状態にした後、目的に応じてカスタマイズする方法をとっています」と、大宮氏はサービス立ち上げの狙いを語った。
「Quickwin CDP」導入後の成果について、大宮氏はある小売業界のA社の事例を紹介する。A社の要望は「オンライン&オフラインを使ってユーザーコミュニケーションを最適化したい」というもの。同社には店舗やアプリ、アフターケアサービスなど、顧客との様々な接点が存在したが、サービス共通の顧客基盤がないため、顧客行動が把握できず、一貫性のあるコミュニケーションをとりづらい状態であった。
A社ではその後「Quickwin CDP」を導入。GCPをベースにCDPを簡易的に立ち上げ、自社データを可視化していった。
「一旦CDPを立ち上げ、そこで得たデータに基づいた施策を打ったことで社内理解が進み、『もっと投資しよう』という雰囲気が醸成されていきました。それまで連携していなかったマーケティング部門以外の部門の協力も得られるようになり、データの種類を増やすなどの理想的な流れが生まれました」と大宮氏は振り返る。また、A社が当初そうであったように、DX推進は、部署間の連携も障壁となりやすいと指摘する。
「縦割りの組織内でいきなり部署間のデータを連携するのは難度が高いです。ですから、まずはCDP導入の中心となる部署から始め少しずつ広げていくことが重要です」。
大宮氏は今後の展望について、「営業領域にもデータ活用支援のサービスを広げ、汎用的な課題をサービス化することで課題解決の速度を上げていきたいです。それにより、日本企業のDXはもっと前に進んでいくはずですから」と思いを話した。
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