マーケティングデータの利活用は企業の重要命題のひとつ。東急エージェンシーではクライアント企業に向け、ビジネスに生かすデータ分析のコンシェルジュサービスを開始。納得性や説明力を意識したという新たな取り組みについて、同社マーケティングDX本部の真弓省吾氏と飯塚久哲氏に話を聞いた。
メディア横断で最適化に導く「Impact Finder®」
総合広告会社として、数々の大手クライアントをサポートしてきた東急エージェンシー。同社が今年の3月から手掛けるのが、広告を中心としたマーケティング施策の効果を可視化し、事業に貢献する打ち手を導き出すことを目的としたデータ分析サービス「Impact Finder®(インパクト・ファインダー)」だ。同社がこの新ビジネスを始めたのは、マーケティングDXが思うように進まないクライアントの声を聞いたことがきっかけだという。
マーケティングDX本部の真弓省吾氏は、「国内企業のDXは、まず業務の“デジタルシフト”が課題でした。それが数年を経て、社内に集まってきたデジタルデータを使って戦略を立てる段階に入った。とはいえ、多くの企業は顧客データの活用法について明確な指針を持つには至っていないのが現状です」と述べる。
データアナリティクス部部長の飯塚久哲氏は、企業内部でのデータ活用の難しさについて、「現場の感覚では、データの種類は大きく2つに分かれます。ひとつは調査などで『集める』データ、もうひとつは業務によって自動的に『集まる』データです。一口に『顧客データを活用する』といっても、この2つは特徴が異なり、それぞれに対応していかなければなりません」と説明する。
「集まる」データとは、例えばPOSデータやWebログデータであり、偏りも大きい。それらをコストをかけて「集める」、精度の高いデータと合わせ、有効活用しなければならないフェーズに入り、難易度が高まっているという。広告会社である同社では、クライアントに対し、日々“マーケティング施策の効果”について、データを用いた説明を行い、分析したデータをもとに施策をサポートしてきた。
「Impact Finder®」はこの分析力と提案力を“資産”として、様々な分析メソッドをメニュー化し、コンシェルジュサービスとして体系化している。「Impact Finder®」には、同社が慶應義塾大学の星野崇宏教授と共同研究を続けてきた、データの価値を引き出す「データサイエンス」と、効果検証のための「計量経済学」が活用され、異なる課題や異なるデータを持つクライアントに対して、最適なアプローチの提案を可能にしている。
「テレビとデジタルの予算配分の最適化や、OOH施策の効果の可視化など、様々な方面で相談を受けています。コンシェルジュサービスなので、分析結果を提出して終わりではなく、分析官でありプランナーでもある当社の担当者が、クライアントとディスカッションを重ね分析を深める。試行錯誤を重ねながら進めるタイプのクライアントに評価いただいています」と飯塚氏。
さらに9月1日には、業務提携をしているサイカの技術を連携した「Impact Finder® MMM powered by XICA」を発表【図表1】。「Impact Finder®」の対応領域でも中核をなすMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)領域で、より高速化・省力化を図り、多様なニーズに対応できる分析コンサルティングサービスへと進化している。
「Loyal-U Finder™」が潜在的ロイヤルカスタマーを発見
同社の顧客データ分析を活用したもうひとつのサービスが、スマートフォンアプリの利用データにより、顧客分析とメディアプランニング・バイイング支援を行う「Loyal-U Finder™(ロイヤル・ファインダー)」だ【図表2】。
「昨今、スマートフォンアプリは広告主企業が生活者とのコミュニケーションを深める“CRMツール”として注目されています。ただ、アプリデータはそのアプリ提供企業しか見られないものでしたが、『Loyal-U Finder™』では、ユーザーから予めデータ利用の同意を取得した100万台規模のスマホから収集される起動ログデータを活用できます」と真弓氏は話す。
これにより、他社アプリ利用者の中から自社アプリ利用者と類似した“アプリの使い方”をする人を見出し、アプローチをするなども可能に。
「自社アプリのユーザーは、ある程度ロイヤルカスタマーだと考えられます。そのため、自社アプリ利用者を中心にデータ分析をすれば、ロイヤルカスタマーと似た人々が浮かび上がってくる。これが、潜在的な優良顧客を発見する『Loyal-U Finder™』のプロセスです」と真弓氏。また飯塚氏は、「Loyal-U Finder™」の可能性について次のように言及する。
「自社アプリのデータしか見られなかった企業が『うちのユーザーは他にもこんなアプリを使っている』という発見が得られることも。より精緻なターゲットプロファイリングや、デジタル広告のセグメント設定の変更など、潜在的なロイヤル層に対して従来とは異なるアプローチが可能になります」。
真弓氏は、「今後は、『Impact Finder®』をはじめ、当社の関連ソリューションをフル活用し、広告主企業のマーケティング活動の開発や効果検証等について、さらにしっかりと説明責任を果たしていきます。また、『Loyal-U Finder™』は様々な新ビジネスにつながる可能性を多分に秘めています。データ活用により、クリエイティブやマーケティング施策への新たな“発見”や“効果”の提供を主軸に、データを新事業などにも生かし、成長していければと思います」と語った。
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