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経済学の視点

行動経済学が解き明かすバイアスの罠

依田高典氏(京都大学大学院)

人間の行動を解き明かし 行動に介入する方法を考える

行動経済学という学問をご存じだろうか。ひと言でいえば、人間はさほど賢くなく、感情に揺らぐ存在として、経済学の理論を見直そうという学問だ。当たり前の話だ。賢くないのは学者のほうではないかというなかれ。経済学では、長い間、人間を合理的な「経済人」と仮定してきた。学問の伝統は堅牢なもので、なかなか牙城は墜ちない。

行動経済学の挑戦を推し進めた何人かの巨人がいる。最初の巨人は、ハーバート・サイモン(1916-2001)。アメリカのカーネギーメロン大学で活躍したサイモンは、合理性と非合理性の挟間の人間を「限定合理性」として位置付けた。そして人間は、数学の最適化問題のように厳密解を求めずに、一種の疑似解に沿って行動するという「ヒューリスティクス」という概念を提案した。サイモンは第一世代の人工知能研究に関わり、1978年にノーベル経済学賞を授与された。

続いて登場するのが、イスラエル出身の心理学者ダニエル・カーネマン(1934-)だ。カーネマンは、盟友のアモス・トヴァスキー(1937-1996)と一緒に、人間の行動の厳密解からの乖離傾向を表す「バイアス」を提唱した。

カーネマンはどちらかというと、アイデアをじっくり考える凡才型。トヴァスキーはひらめきで勝負する天才型。二人は時には...

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