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私の広告観

アートと広告的思考を融合 池澤樹氏、篠原ともえ氏の広告観

池澤 樹さん、篠原ともえさん

10代で歌手としてデビューし、アーティストとしても活躍するなどマルチな才能を発揮する篠原ともえ氏。現在はアートディレクターで夫の池澤樹氏と共同でクリエイティブスタジオ「STUDEO」を立ち上げ、アートやデザインの領域でも活躍している。両氏にアート的感性や思考の観点による広告のあり方について聞いた。

(右)池澤 樹(いけざわ・たつき)さん
アートディレクター、クリエイティブディレクター。1981年生まれ、武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。東急エージェンシー、博報堂を経て2020年独立。同年クリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。主な仕事に、トヨタ「GR」「86」、サントリー「伊右衛門プラス」「黒烏龍茶」「六 ROKU」、ロッテ「SWEETS DAYS乳酸菌ショコラ」など。主な受賞に、東京ADC賞、JAGDA新人賞、カンヌ国際広告祭 金賞、ONESHOW 金賞、ADFESTグランプリ、NY ADC銀賞、日本パッケージデザイン大賞 銀賞、ベストデビュタント賞ほか。

(左)篠原ともえ(しのはら・ともえ)さん
デザイナー、アーティスト。1979年生まれ、文化女子大学短期大学部服装学科ファッションクリエイティブコース・デザイン専攻卒業。1995年ソニーレコードより歌手デビュー。歌手・ナレーター・俳優活動を経て、現在は衣装デザイナーとしても創作活動を続け、アーティストのステージ・ジャケット・番組衣装を手掛ける。2020年、夫でアートディレクターの池澤樹とクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。同年開催の「SHIKAKU -シカクい生地と絵から生まれた服たち-」では、サステナビリティと向き合い廃棄となる余剰の生地を余すことなく使い切る衣装作品などを展観し、大きな話題を呼んだ。

ワンオペでのモノづくりの不安がチームを得て払拭された

──経歴や視点の異なる2人が「STUDEO」を立ち上げ、運営することで、仕事や考え方に変化は生まれましたか。

池澤:もともと僕は広告会社でアートディレクターとして仕事をしてきましたが、40歳くらいで独立したいと考えていたんです。そんな時に仕事で篠原さんと知り合い、自身の作品レベルを上げたいと相談を受けました。お互いキャリアの転換期を迎えている中で、アーティスト、芸能界という道を歩んできた篠原さんと、広告会社で培ってきた僕の視点を掛け合わせることで新しいものが生み出せるのではないかと、会社の立ち上げに至りました。「STUDEO」で共に仕事をすることで、互いに良い影響を与えていると感じます。

僕としては、以前はCMやグラフィック広告など、いわゆる狭義の意味での広告の仕事がほとんどでしたが、携わる領域の幅が広がりました。例えば当社では日本タンナーズ協会さんとの取り組みを2020年から行っており、2021年には革のアクセサリー「LEATHER-MADE JEWELRY」が、そして2022年に鹿革のきもの「THE LEATHER SCRAP KIMONO」がニューヨークADC賞を受賞しました。

このような出会いは篠原さんと共同していたからこそだと思います。デザインの基本的な考え方は変わらないし、スキルは自分でも磨くことはできますが、領域の拡大や、新たな出会いを生み出すことは難しいですから。逆に篠原さんは、それまで完全にひとりで作品をつくっていたので、チームでモノづくりを始めたことは大きな変化だったのではないかと思います。

篠原:そうですね。芸能事務所にいたときは、プレゼンボードからデザイン画など何から何まで全部ひとりでつくっていました。しかし、いただく案件はとてもレベルが高いものなので、このままひとりで挑み続けることができるのだろうか?というプレッシャーが大きくなっていったんです。

でも「STUDEO」を立ち上げ、池澤さんが広告会社で培ってきた知見から、モノづくりの流れを教えてもらいました。まずはコンセプトを決め、皆でアイデアを出し合ってプレゼンして⋯。チームで作品をつくることのメリットを知ってまさに求めていたのはこれだと。ひとりで作品をつくっていた時に感じていた不安やコンプレックスがなくなりました。

先ほど話にも出た、日本タンナーズ協会の革のアクセサリーデザインの案件を例に挙げると、この案件は当初...

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