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デジタルだけでブランドはつくれるか?

新生パナソニックグループはいかにして企業ブランドを構築するのか?

森井理博氏(パナソニックホールディングス)

2022年4月1日、パナソニックは持株会社制に移行し、パナソニック ホールディングスが発足した。このタイミングで新たに発表されたのが、「幸せの、チカラに。」というグループのパーパスを表すブランドスローガンだ。BtoCだけでなく、BtoBも網羅する7つの事業体のパーパスを総称するスローガンはどのように策定されたのだろうか。

メーカーとしてのDNAは継承「物心一如」がパーパスの基点に

松下幸之助氏が1918年に創立したパナソニックグループ。“家電の会社”というイメージが強い同社だが、現在は、製造・物流現場の機器やシステム、モビリティ・社会インフラを支える電池や電子部品など、日々のくらしやビジネスに貢献する幅広い製品とソリューションを提供しており、ひとつの事業で自社を規定することが難しいほど変革を遂げてきた。

ブランド戦略担当の森井理博氏は、今回のスローガン設定の背景を次のように語る。

「現在のパナソニックグループはコアとなる事業がいくつかありつつも、合計して34の事業それぞれが市場に向き合っている。事業の“最大公約数”的なメッセージを発することが難しい状況にあるなかで、それでもグループの存在意義を伝える必要がありました」。

環境問題への取り組みをはじめ、企業として社会課題に対する姿勢が問われる今、特に若年層におけるブランド理解を促すうえでは、グループの存在理由、つまりパーパスを明確に示すことが必要だったのだ。

そこで発表されたのが「幸せの、チカラに。」というブランドスローガンだ。込められた意味は「物と心が共に豊かな理想社会の実現」。森井氏は「この言葉には創業者である松下幸之助から受け継がれた想いが込められている」と説明する。

松下氏は、物と心は一体であるという意味の仏教用語である「物心一如」を経営において重視した。今回のスローガン開発においても、この考え方が基点になっている。

森井氏は「製造業という出自はパナソニックのDNAである」と語る一方、モノだけが溢れても人は幸せにならない。心も豊かになるお役立ちをしなければならないとの思いから「物心一如」の考えをパーパス策定の中心に据えたのだという。

各国のSNS上で語られる言葉を解析し、心を豊かにするためには瞬時の幸せではなく、「持続的な幸せ」を求める世界共通の価値観を抽出。この「持続的な幸せ」をスローガンで表現した。読点には、“人それぞれの幸せを考えるための一呼吸の意味”を込め、文末の句点には、“それぞれの人、場所の幸せに応える強い意志を示し、言い切りの意味”を持たせた。

グローバルでは、日英中の三カ国語で展開。英語では「Live Your Best」、中国語では「关护无界 身心如悦(どこまでも寄り添う 心身の喜びのために)」。いずれも、日本語のスローガンを直訳したものではない。言葉を統一するのではなく意味を同じくし、各国の人々の腑に落ちるようなものとした。

また、ビジュアルにボタニカルのモチーフを採用し、7つの事業会社のモチーフを異なる色の花や形で表現した。

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