2021年4月に事業を開始し、1年が経過したデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)。まずは広告主側がデジタル広告の品質に対する課題意識を共有することが、活動の推進には欠かせない。首都圏のみでなく全国へと活動を広げていくうえでは、どのような取り組みが必要なのか。中部に本社を置くコメ兵との対談を行った。

日本アドバタイザーズ協会(JAA)
専務理事補佐
デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)
事務局長
小出 誠氏

コメ兵
マーケティング部
ゼネラルアドバイザー
諏訪弘樹氏
企業ブランドを重視するコメ兵 社内において対応の必要性が浸透
──コメ兵ではどのような体制でデジタル広告を運用しているのですか。
諏訪:当社では、デジタル広告の運用自体は基本的にパートナーである広告会社に依頼させていただき、週次で定例会議を実施しています。その場で広告の状況や実績を報告してもらっているというのが、現在の体制です。JICDAQさんが取り組まれている、“広告取引の透明性”という点については、コメ兵としても課題を感じていました。現在は、アドベリフィケーションツールを導入し、ブランドセーフティやアドフラウド対策を行っています。
小出:アドベリフィケーションツールの導入など、ブランドセーフティへの対策を行うと、短期的には広告の効果が落ちたようにも見えてしまいます。ブランドの価値を守り、安全な広告出稿を続けていくために、避けては通れない“一瞬の痛み”のようなものではあるのですが、それを理解してくれる経営層が必要です。その理解がないと、担当者は一時的にでも数値が下がることをなんとしても回避しなければならないという状況に追い込まれ、対策を導入できないという悩みの声も耳にします。
コメ兵さんがツールを導入される際には、このような課題はなかったのでしょうか。
諏訪:デジタル広告の取引の透明性に対する課題は数年前から抱いていましたが、投資の判断に際しては、多少の時間が必要でした。実際に導入を始めたのは最近なのですが、「インプレッションやコンバージョン、ひいてはその先にある収益が下がるのではないか」という意見もあり、議論を重ねました。
小出:最終的にアドベリフィケーションツールを導入するという決断をしたのはどのような経緯だったのですか。
諏訪:コメ兵は二次流通の業界で、ブランドのリユース品を扱っています。ブランドの価値を見極め、適正な価格を定める“目利きのKOMEHYO”というポジションは、企業としての重要なアイデンティティ。このように、“ブランドの価値”を重視したビジネスを行っているコメ兵の広告が、例えば海賊版サイトや、“偽物”などのキーワードが書かれているページに掲載されていたら、お客さまからの企業に対する信頼にかかわります。こうした観点を社内でも説明し、ツールの導入に至りました。
まだまだ、十分な対策ができているとは言えない状態ですが、品質向上のための第一歩になったのではないかと思います。
小出:コメ兵さんはツールを入れ、対策を進める決断をされましたが、同じような議論で対策を進められない企業は多くあります。そのためには現場だけでなく、決裁権をもつ役員やトップ含め、企業全体にこの意識が浸透する必要があります。JICDAQでもそのために発信を続けていかなければと思いますね。
広告主と広告事業者 両者に必要な課題感と危機感
──広告会社の意識という点でも意見を聞かせてください。諏訪さんはパートナーである広告会社とも、デジタル広告に関する課題や危機感を共有しているのですか。
諏訪:先ほどお話ししたように、広告会社とは週に1回打ち合わせの場を設定しており、その場で情報共有やベクトル合わせを行っています。そこで課題は共有できていると思います。加えて、当社の場合は...