不確実性の高まった社会環境のなかで、生活者の心は揺れ動き、マーケティング・コミュニケーション活動の難しさが増していました。
しかし、そんな生活者の気持ちに企業の最前線で接してきた広告・マーケティング部門のトップの皆さんは、これまでの経験を生かし、コロナ禍の先を見据えた新しいコミュニケーションの在り方をすでに見つけ始めています。
生活者のブランドに対する期待も変わりつつあると言われるなか、いま日本を代表する企業でマーケティング・コミュニケーション活動を担うトップの方たちは、どのような戦略を描いているのでしょうか。38社の戦略から、成熟化した日本市場におけるブランドと生活者の関係性を考察します。
(敬称略・五十音順)
31 ポーラ

ブランドマーケティング部
部長
中村 俊之(Nakamura Toshiyuki)
2018年ポーラ中途入社。2019年日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構(旧Web広告研究会)代表幹事、2020年CRM推進部 部長、2021年よりブランドマーケティング部 部長。
今年度のマーケティング戦略の方針
顧客視点を起点としたブランドコミュニケーションを通じて、お客様との新規接点拡大および購買行動にROIを高めながら寄与していくこと。
消費行動やメディア接触の変化として感じること
コロナ禍をはじめとした社会環境によるお客様の消費行動の変化は定着し、新たなフェーズを迎えようとしていると感じています。消費者にとってOMOという概念が当たり前になるなかで、これまで以上にメディアの垣根を越えて、顧客体験を高めていくための横断的なマーケティング活動が必要だと考えます。
今年注力したい領域
● 商品の売上を宣伝施策で高めること
● 継続的な購買の促進(リテンション、リピーター獲得施策)、既存顧客への対応
● デジタル/リアルの顧客チャネルの統合・一元管理
昨今注目の広告・マーケティング手法
● マーケティング投資の最適化
● デジタル広告の品質問題
● オウンドメディアの活用
実務上で抱えている課題
● 実施したいことを実現するための人手が足りない
● デジタルテクノロジーに関する知識・スキルが不足している
● 外部パートナーとの連携体制に不安・不満がある
部門の人材に期待するスキル
● 企画力
● 表現力/センス
● データ分析力
● 実行力
● 調整力(他部門、外部パートナーなど)
● 自社・自ブランドについての理解
32 森永製菓

マーケティング本部
広告部
広告部長
猪瀬 剛宏(Inose Takehiro)
1991年森永製菓入社。製造・販売を経て2003年マーケティング本部、2007年営業マネジャー、2014年マーケティングマネジャー。2018年4月より現職。
今年度のマーケティング戦略の方針
ブランドの戦略とターゲットに沿った、強いコミュニケーション戦略を策定し、広告効果の向上を目指す。最適な広告費配分・媒体プランを検証し、ブランド価値を維持・創造・向上させる。デジタル広告・販促の強化と、オウンドメディアの徹底強化でお客様との深い繋がりを構築する。
消費行動やメディア接触の変化として感じること
生活様式が変わり、デジタル化も一層進んだ。生活者が主体的に選択したメディアやリソースで情報収集する時代になった。クッキー対応の有無に関わらず、生活者が広告に触れた際にマイナスの感情になれば、その広告は有効とは言えない。いかに嫌われない形で有効な情報として広告に触れていただくかが課題となっている。
今年注力したい領域
● 企業のブランド価値を向上させること
● 新規見込み客の発掘(リードジェネレーション)
● デジタル/リアルの顧客チャネルの統合・一元管理
昨今注目の広告・マーケティング手法
● マーケティング投資の最適化
● メタバース/VR/AR
● パーパスブランディング
実務上で抱えている課題
● 実施したいことを実現するための予算が足りない
● デジタルテクノロジーに関する知識・スキルが不足している
● 取り組みの成果を評価する指標がない、あるいは不明確
部門の人材に期待するスキル
● 専門知識
● データ分析力
● 実行力
● 調整力(他部門、外部パートナーなど)
● 自社・自ブランドについての理解
33 森永乳業

マーケティングコミュニケーション部
部長
林 正義(Hayashi Masayoshi)
2015年冷菓マーケティンググループ長、2020年ビバレッジマーケティンググループ長を経て、2021年よりマーケティングコミュニケーション部長。
今年度のマーケティング戦略の方針
「広く告げる広告から、広がるように告げる広告へ」
① 広告のBarrier-Freeの視点
嫌な気分・気持ちにさせない取り組み
② VUCA Drivenの視点
変化が多くを予測困難な時代の新たなコミュニケーション手法
③ Fun Drivenの視点
共感・愛着を通して生活者の態度・行動変容を促す
消費行動やメディア接触の変化として感じること
情報量がこの20年で約6450倍と爆発的に増え、メディアが多様化したことで各メディアの視聴態度も悪くなり、また自分が見たいコンテンツは自分で選択して見られる時代になっています。そのため、企業や商品を広告で伝えるためには「デジタル時代のCOM」の視点が必要だと考えています。
今年注力したい領域
● 企業のブランド価値を向上させること
● 広告会社、制作会社、クリエイターとの連携
● 部門内の人材育成