環境問題やジェンダー平等、人権など、学生時代から社会課題に触れる機会が多いと言われるZ世代は、これからの企業の「成長」をいかにとらえるのか。自身で会社を立ち上げ経営を行っているZ世代経営者3人に考えを聞いた。
“好感度”に“社会へのインパクト”Z世代が考える新たな指標
──起業し経営を行っている皆さんですが、「売上拡大」以外に、企業の成長を表すことはできると思いますか。
今瀧:私はZ世代に関する企画・マーケティング事業、ブランド事業を展開している、「僕と私と」という会社を経営し、複数のブランドを立ち上げているのですが、自身の経験からも、“企業好感度”や“ブランド好感度”は目標・指標になりうると考えています。
「売上」は企業にとって重要なもの。しかし少子高齢化によって、日本の消費市場は縮小しており、売上を高め続けるのは非常に難しいです。そこで重要なのが“好感度”です。大手企業であったとしても、事業を撤退したり倒産したりといったことが少なくない時代。逆にスタートアップでも大きな注目を集め、話題を生み出している企業もあり、商品を買うにしても、就職先を検討するにしても、選択肢が以前と比較して増えました。
多くの選択肢がある中で、これからの未来を担う若い世代が何を考えて企業やブランドを選んでいるかというと、「自身がなりたい姿・叶えたいことに近づくことができる企業・ブランド」「共感できる企業・ブランド」を選んでいるように思います。消費行動がある種の投票になり、企業やブランド自体を“応援したい”から購入する、というパターンが多くなっています。そのため、応援されて、愛されていることを示す“好感度”が大切なのではないかと思いますね。
江連:今瀧さんの“好感度”が指標になるという考えは私も同意です。新規顧客の拡大を目指すだけではなく、いかにリピートしてもらうかがとても大切で、そのためにはブランドそのものを応援してもらい、愛してもらうことが重要だと思うからです。
私は「I_for ME(アイフォーミー)」というブランドを運営していて、女性向けにショーツを履かなくても着られる部屋着「“おかえり”ショーツ」を販売しています。運営においてさまざまな指標をとっていますが、一番大切なのが「プロダクトの購入有無にかかわらず、ブランドの世界観にとにかく共感をしてくれていて、世界観を好きでいてくれているコアなファンがどれだけいるのか」。これをファンコミュニティに入会しているファンの数で測っています。
また、“好感度”という軸とは別に私が指標のひとつだと考えているのが、自社の行っている活動が“本質的に社会にインパクトを与えられているのか”です。
私が経営をしている「Essay」ではジェンダーの課題を扱っていて、女性が悩みを口に出しにくい社会の構造に対して問題提起をすることを目的に、プロダクトやブランドをつくっています。また、服飾系の商品の背後には、児童や女性の労働力を搾取するといった社会課題も世界的にはあるため、この点にも配慮できているのか、問題提起し続けられているのかは、日々意識をしていますし、お客さまにもこうした思いを伝え、理解していただいた上で、信頼してブランドを選んでほしいと考えています。
起業をして「株式会社」という形態をとっているのも、消費者に直接メッセージを届けられると考えたからです。なので、もし他により良い手段が見つかれば、別の方法をとる選択肢も常に視野に入れられるよう、「社会にインパクトを与えられているのか」をウォッチし続けています。
富山:私もお2人の“好感度”が指標になるという話に賛成です。経営している「Follop」は、「クリエイターエコノミー」の実現を目指して、デジタルマーケティングや、インフルエンサー支援、クリエイター教育などを行っている企業です。私自身が直接ブランドを運営している訳ではないので、普段かかわるインフルエンサーについて話せればと思います。
インフルエンサーと企業とをつなぐ中で、インフルエンサーに「どのような商品を扱いたいか」と聞くと、「“信頼性”のある商品」という答えがよく返ってきます。
単純に収入だけを考えると、単価が高かったり、売上が非常に伸びていたりといった商品もあるのですが、それでも信頼性のない商品などを扱うと長期的な視点で見た際に、インフルエンサー自身の信頼の低下にもつながりかねない。なので、信頼性のある商品を扱いたいし、視聴者・フォロワーからの信頼を大切にしたいと考える人が多いです。この“信頼”はお2人がいう“好感度”と、イコールと考えられるのではないかなと思います。
“信頼”や“好感度”を測る方法としては、エンゲージメント率が...