第5のコア事業として航空外収入の拡大を目指す
今年3月、ANAのグループ会社であるANA X(エイエヌエーエックス)とデータアナリティクスを専門とするアポロは、データベースマーケティングサービスを提供する新会社オービティクスを合弁で設立した。
データアナリティクスによるANAグループの顧客に対する提供価値の拡大、ANAグループのデータ分析・ソリューション開発サービスの提供が同社設立の目的だ。
出資比率はANA Xが70%、アポロが30%で、代表取締役に就任したのは板橋直樹氏だ。板橋氏はNTTで法人営業を経験したのち、ANAグループに移籍。通信インフラの整備、ドイツに駐在しスターアライアンスでの業務を経験したのち帰国。LCCバニラエアの立ち上げ、ANAグループのDX戦略に携わるとともに、経団連のDX会議のタスクフォースメンバーも兼任。昨年度まで2年間デジタル変革室イノベーション推進部に在籍していた。
オービティクスが設立された背景には、ANAグループとしてのデータ活用やプラットフォームに関する戦略がある。
2016年に設立されたANA Xの前身は、ANAマイレージクラブ会員向けのマーケティングを担っていた「ロイヤルティマーケティング部」だ。同部は、マイレージクラブ会員のデータベースを起点に、加盟する企業での買い物でもマイレージを貯められるなどANA経済圏の確立を目指していた。
別会社となって活動を始めたANA Xでは、さらにこのプラットフォームを起点に新たな事業の創造も担っている。
2018年に発表されたANAの中期経営戦略では、「成長する5つのコア事業」として掲げられた国内線(第1)、国際線(第2)、貨物(第3)、LCC(第4)に並ぶ、第5のコア事業としてノンエア部門が位置づけられている。この第5のコア事業の創造を目指すのがANA Xの役割と言える。
「当グループの基盤は航空事業であることに変わりはないが、コロナ禍をはじめ航空業界を取り巻く環境が変化するなか、新規事業を創造する必要性がますます重要な課題となっている。我々には航空事業を通して得た膨大なビックデータがある。そのデータを分析するだけではなくて、データを事業やサービスにどのように活用していくかが今、問われている」と板橋氏。
しかし、一般的に大手企業においてデータを扱える専門人材の獲得や育成は共通して課題となってきた。今回、データサイエンスとコンサルティングに強みを持つ会社と合弁で会社をつくったことで、データ解析・活用に強みを持つ...