『戦争広告代理店』に見る“世論の構築”
2005年に刊行された『戦争広告代理店』を当時筆者は本屋で手にとり、タイトルにひかれて購入してみた。以前から第2次世界大戦の情報戦には関心があり、関連した本を読み漁ったが、「広告代理店」となると民間であり穏やかなものではない。同書は1992年に起きたボスニア紛争において、アメリカのPR会社が行った一連のキャンペーンが紛争を有利にしていった実情が描いている。米国の世論、ひいては国際社会に大きく影響し、セルビアを悪と仕立て上げることに成功した様子が詳しくわかる内容だ。
近代戦においては民間の軍事会社も参入するが、非常に大きな影響力を持つ情報戦において私たちの属する広告業界も、戦争に加担する可能性や事実を見せつけられた。議会に圧力をかけるロビイストとは違って、世論の構築とは我々の業界そのものだ。
何を信じるか・疑うか 嘘と真を見分けられるか
4マスに代わる形で世の中の人が情報収集に利用しているのがSNSだ。電車の遅延情報から流行のファッション、最新のニュースまで、検索するよりSNSを携帯からチェックするのが昨今の常識的な行動になっている。
しかし、さまざまな情報には真実もあればフェイクもある。広告収入目当ての「人を驚かす」だけの情報も多い。今を生きる人は当然ながら情報の真偽も見分ける力が必要になるのだが、「情報のプロフェッショナル」にかかれば虚偽の情報を信じ込ませることも容易なものだ。
私たちの仕事を思い起こしてみよう「情報は諸刃の剣になり得る」
広告人である私たちは前述の「情報のプロフェッショナル」だ。日々の仕事を...
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