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宣伝会議賞

最終審査員15名が振り返る 第59回「宣伝会議賞」

3月10日に行われた第59回「宣伝会議賞」の贈賞式。その直前まで、最終審査会が行われていました。今回は眞木準賞が「該当なし」という結果になるなど、賞そのものの在り方や作品についても深い議論が交わされました。今年集まってきた作品たちは審査員の目にどう映ったのでしょうか。15人の講評を聞きます。

    審査員長
    ナカハタ
    仲畑貴志

    コピーをこさえるには、何をいうか?と、如何にいうか?という2つの作業があります。今年の参加作を見ていると、如何にいうか?ばかりに集中しているようでした。如何にいうか?は表現の華ですから、重要ではありますが、その前の何をいうか?という思索も非常に重要です。クライアントから与えられた訴求ポイントを人生や生活の中に価値付ける、いわゆるコンセプトワーク。そのことによって、商品の存在意義が強く認識され、そのあとの如何にいうか?という作業を、より的確にし、深度のあるコピー、広がりのあるコピーを生むことができます。

    賞を獲得するための傾向と対策ということからすると、「眞木準賞」狙いがありますね。商品の価値を軽妙に言い当てるチャーミングなコピーが、眞木君らしいコピーです。残念ながら、今年は該当作なしでした。来年を期待しています。

    一倉広告制作所
    一倉 宏

    よく考えれば、川端康成が歌うわけでも朗読するわけでもないのだけれど。グランプリは、その無茶な話法がかえって新鮮だった。坊ちゃんでもメロスでもなく、伊豆の踊り子だからこそ成り立つところも絶妙と思う。三味線のイントロが聴こえてきそうな。小説なんだけど。そういえば踊り子たちは「天城越え」するしね、たしか。

    眞木準賞は、該当作なしということで、この賞の意義を再確認する機会としたい。眞木さんの名にふさわしいのは、やはりオシャレでスマート、知的で洗練されたコピーだと考える。ダブルミーニングなどの技法ばかりに捉われるのは残念だ。「駄洒落コピー」と括ったWikipedia「人物」欄での、愛と理解に欠けた記述には胸が痛む。来年こそは、準ではなく真の、眞木準賞コピーが輝くことを期待しています。これは選ぶ側の責任でもあるので、あらためて肝に銘じつつ。

    博報堂
    井村光明

    オーディオブック、宅配ボックス、オンラインサービスなど、入選作のほとんどは今を感じさせる商品・サービスのコピーでした。その中でも注目したいのはCMゴールドを受賞した水野さんの作品です。「再配達になる」のではなくて「させてるん、でしょ」。文末の「なる」を「させてる」にするだけで鮮やかに読み手の視点を切り替えていました。しかもこの作品が訴求しているのは、ユーザーのメリットではなく社会のメリットです。

    少し前まで広告がソーシャルグッドを語るときれいごとのようにも感じたものですが、今やすっかり社会のメリットを自分ごとに思える時代になっているわけです。「なる」ではなく「させてる」は、そんな世の中の意識の変化を象徴している言葉のようにも感じられました。宣伝会議賞は、未来を作ろうとしている意欲的な協賛企業さんが多く、またコピーライターの言葉がそのまま発表される場でもあります。実際に出稿されている広告よりもリアルな今を感じられる場と言えるのかもしれません。

    オカキン
    岡本欣也

    コピーはいつだって、時代に寄り添い、時代の課題を解決しようとする。企業に寄り添う。そしてサービスを提供する当の本人たちですら気付かなかった真理を見つけて言語化するのだ。今回受賞したコピーを見ていて、そんなコピーならではの「普遍の使命」について思いを馳せた。それだけコピーとしてのクオリティがどれも高かったし、コピーの使命をしっかりと理解している、という意味で、純度の高い作品が多かった。

    中でもオトバンクとイー・スピリットに、出色の出来が多かった。今回受賞には一歩届かなかったが、「無名の女優は、探せない。」もいまだ心に残っている。それと、これもファイナルだったが、「しあわせになるために、人はおなかが減るのです。」もとてもよかった。食という掘り尽くされたジャンルで、新たな発見をするのがいちばん難しい。

    電通
    門田 陽

    仲畑さんの「いいものを選びましょう」のひと言で開始された最終審査。グランプリのコピーの魅力はまずその佇まいでしょうか。ファイナリストに残った24本の中で目立ち方がうまかった。そしてこのコピーのもう一つのポイントは見る人によってその時代時代での名司会者の絶妙な口調が聞こえてくる点です。しかし、もし同タイプのものが他にあれば結果は違っていたかもしれません。ファイナリストに残った24本はもうその時点で十分立派。

    最後の決め手は運です。だって、ファイナルに残るための書き方やり方は説明できるけどグランプリになる方法はわからないですもんね。さあ、もう今年は終わりました。来年へのヒントとしてはCM部門が狙い目な気がします(もちろん個人的な意見です)。その際よほど下手でなければ絵コンテを添えるとよいです。最後に眞木準賞について。グランプリのコピーがグランプリでなかったら僕はこのコピーを眞木準賞に推したと思います。

    株式会社国井美果
    国井美果

    今回オトバンクとユニソンに良い応募作が多かった印象。グランプリは、DJの曲紹介フォーマットに敢えて乗っけることで、カワバタとは接点を持つことがないかもしれない層との出会いを軽妙に創出するアイデアがありました。CMゴールド、宅配ボックスでの「させてる。」も鮮やかなコピー。短いやり取りの中に、社会性や友情も感じました。眞木準賞が該当作なしだったのは本当に残念な結果ではあるのですが、眞木さんの名を冠する賞の基準を今いちど真摯に確かめて来年の審査に生かすためには、必要な決断だったと思います。来年が楽しみです。

    考えられないくらい膨大な応募作の中から最後まで残るものは、企業が言いたくて仕方ないことを、私たちが言われたかったことにうまく転換できている。...

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