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国語学の視点

ヴァーチャルな方言のCMたち

金水 敏氏(大阪大学)

ギャップのあるキャラを演出 方言の〈地域用法〉と〈キャラ用法〉

田中ゆかりさんは著書『「方言コスプレ」の時代』(岩波書店, 2011)で、フィクションの中で用いられる方言を「ヴァーチャル方言」と呼び、発話者の出身地や使用場面を表す〈地域用法〉と、方言が持つステレオタイプなキャラクターを表現する〈キャラ用法〉に大きく区別できるという。

CMにはヴァーチャル方言がしばしば用いられるが、地方CMでは〈地域用法〉、全国CMでは〈キャラ用法〉が多く見られるのではないか、と予想される。ここでは全国版のCM、3点を取り上げたい。

ひとつ目は日清食品グループの「どん兵衛」のCMで、どんぎつね(吉岡里帆)の前で星野源がどん兵衛を食べていると、突然壁が倒れて雪原が広がる。どんぎつねはキツネの姿になって雪の中へ。「その日から男はどん兵衛を食べ続けました。どんぎつねの帰りを待ったとさ」というナレーション(美輪明宏)に続いて、その様子を見ていた地元の老人役の男女(大久保鷹と白石加代子)の会話が聞こえてくる。

「また若(わげ)えもんが化かされとる」「キツネか」「いんにゃ、マーケティングだ」。ノスタルジックでもの悲しい雰囲気が、最後にひっくり返されるのが面白いが、老女の台詞である「化かされとる」の「とる」というのは西日本風、「若(わげえ)もん」とか...

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