「集団主義」の思い込みは経済を危機に陥れる
前回「日本人は集団主義か?」というテーマで、心理学者の高野陽太郎氏の主張を中心に論じた。日本人が集団主義であろうがなかろうが我々の生活や経済とは無関係ではないか、と思われた方もいるかもしれない。実はそうとは言えず、大いに関係があるのだ。というより日本経済を脅かしかねない「危険思想」なのである。今回も高野氏の主張を踏まえて考えてみよう。
危険思想だという理由は、日本人集団主義説は日本異質論につながるからである。日本異質論とは、1980年代の日米貿易摩擦時に特にアメリカが主張したことで、日本ではグローバル・スタンダードから外れたアンフェアな経済慣行がまかり通っていて、そのため日本経済は強いのだ、そのような特殊な行動をする日本は排除しなければならない、という主張の元になるのである。
「今とは時代が違う」、「日本経済は以前のような強さはないから、排除される心配はない」という声が聞こえてきそうだが、そう楽観もできない。
2017~18年頃、トランプ元大統領は、「日本の自動車市場は閉鎖的であり、アメリカ車の輸入を妨害する非関税障壁がある」と主張した。これは1980年代の日米貿易摩擦時の議論によく似ている。当時主流であり...
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