2021年はデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が活動を開始するなど、デジタル広告の取引の透明性に向けて歩みを進めている日本。取引の透明性だけでなく、ユーザーにとって魅力ある広告体験を提供することも市場全体の健全な発展のために必要なことだ。デジタル広告の品質向上に取り組む3社に、市場の現状と可能性を聞いた。
日本のデジタル広告の現状は?各社による課題感と対策
──広告主企業が特に注視すべき、現在のデジタル広告の品質における課題を教えてください。
齋藤:マクロミルは広告主や広告会社に対して、独自の消費者パネルを活用したデジタル広告の効果測定データを提供しています。その中で感じるのは、CPAなどの結果だけで効果を判断するのではなく、コンバージョンしなかったユーザーに対して不快な体験となっていないかという視点を持つことの重要性です。最終的な結果のみならず、そこに至る途中で態度変容を与える効果まで見ることが必要で、当社に対してもそうしたリサーチの依頼は多くいただきます。
マクロミルでは、DoubleVerifyさんのようなアドベリフィケーションに精通した企業や、広告主企業と連携し、アドフラウドを排除した場合とそうでない場合のインプレッションを比較すると、ブランドに対するユーザーの印象はどのように違うのかといったブランドリフト調査も始めています。
武田:齋藤さんがおっしゃったことが課題感として非常に近しいです。さらに言うと、私はブランドセーフティの先にある、ブランドスータビリティ(適合性)まで、議論する社会になることが理想だと考えています。配信される場の文脈に合った広告を配信するべきで、それによってユーザーの広告体験の質の向上につながり、最終的な成果にもつながっていくと考えるからです。
こうした取り組みを実現していくうえでは、コンバージョンに至る前段階の態度変容のプロセス、たとえばブランドリフトの調査とアドベリフィケーションをつなげてブランドごとにチューニングしていく必要があると感じています。
これはグローバルの企業ではすでに着手されている領域でもあり、DoubleVerifyでも「オーセンティック・アテンション™」というソリューションにより、安全性の担保だけでなく、インプレッションが持つ新たな可能性をコンテキストのレベルで見つけ出しています。ブランドの出稿目的に沿ったデジタル広告の活用法を模索するのが、グローバルにおけるトレンドです。
一条:ヤフーでは、デジタル広告の品質における課題をもとに、3つの価値と6つの対策項目で定義した「広告品質のダイヤモンド」という...