「メシ」がもつ重み ニューヨークでも健在
筆者が在籍していた国内大手のエージェンシー、得意先や社内での関係性のバロメーターに大きく貢献していたのは「メシ」だった。「A社のXさんとは結構メシ行ってるから万全」といったことがビジネスを裏付ける。時折、「最近あいつとメシに行っているらしいな?」と人間関係の詮索にも活用される。筆者の元上司は部下同士の「メシ」の頻度や相手との関係性をこまめにメモしていた。これは国内業界特有の文化なのか?
筆者は長い営業職から一転してグローバルでの合弁事業担当になり、頻繁に世界各地を訪れることになった。提携先の本拠地があるニューヨークは最も訪れた場所であり、世界の広告業の中心地としても得るものが多かった。
訪れる前に議事や在米中の予定を送るのだが、到着してすぐに切り出されるのは、その晩か翌日の昼に行くレストランの話が多かった。気づけばあっという間に滞在中の食事が埋まる。昼・夜では飽き足らずに朝食もしっかり入れられる。時差に参っている身には少々有難迷惑な気がするものの、「メシ文化」に染まった業界人としては断る理由もない。
映画『マッドメン』にみる 業界人の「メシ」への執着
60年代のニューヨークの広告業界を描いた『マッドメン』を観ていると、登場人物のオフィスには必ずウイスキーが鎮座していて、昼間から打ち合わせ中にグラスに注ぎ、または噂話の脇役として手放せない存在に映っていた。酒もメシも業界から切り離せない存在の気がする。
実際『マッドメン』の舞台とされるエージェンシーを訪れる機会は多かったが、同社のCEOが打ち合わせの合間によく案内してくれたのはマディソン街の...