主観的な行動を重視する「経済学の視点」が有用な理由
本連載では、経済学の視点から広告業界にまつわる様々な論点を議論してきました。いまさらながら「経済学の視点」とは何なのでしょう。そして、なぜ経済学の視点が問題を理解するために有用なツールとなり得るのでしょう。
経済学ではあらゆる問題を制約付最適化問題としてとらえます。制約付最適化と聞くと難しそうですが、簡単に言うと「与えられた条件の下で最も自分に有利になるように行動すること」だととらえてください。そして、経済学ではあらゆるプレイヤー(企業やその従業員・顧客・消費者)はそれぞれ自分にとって可能な範囲で一番有利な行動をとっていると想定します。
このように聞くと、「世の中にはとうてい合理的とは思えない馬鹿な選択をする人・企業がいる──よって、経済学は非現実的だ」と感じるかもしれません。これに対する伝統的な経済学の反論は単純です。人々は主観的な満足度を最大化しているのであって、他人から見てどんなに不合理に見えても「その人にとって」は何らかの利得がある行動なはずではないでしょうか。
将来のことを考えず、日々遊んで暮らしている人も、経済学では、主観的に最適な行動をとっていると理解します。将来の危機よりも現在の...
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