消費者のパーセプション(認識)の変化に着目してマーケティング活動を設計する「パーセプションフロー・モデル」について解説した書籍『The Art of Marketing マーケティングの技法』が12月に発売された。著者の音部大輔氏と、かつて大学院博士課程で音部氏の指導にあたった石井淳蔵・神戸大学名誉教授が本書のテーマや日本企業のマーケティングの課題について話し合った。
「仕組み」をマネジメントする
石井:新刊、大変興味深く読みました。「パーセプションフロー・モデル」は非常に合理的な考え方ですね。
音部:ありがとうございます。
石井:私は学者の視点で、学問との接点から気づいたこと、ポイントと思ったことを挙げました(図表)。
本書とマーケティング理論との接点
1.理詰めで書かれたマーケティング・マネジメント本
2.プロセスマネジメント:仕組みのマネジメント
3.(生態学的)情報処理理論
4.リフレーミング(文化変容)
5.人工物のデザイン(エフェクチュエーション)
6.みんなの「協働」のなかでブランドが生まれる
7.「ブランドをつくる」ではなく「ブランドが生まれる」
ひとつ目は、全体を通して、理詰めで書かれたマーケティング・マネジメントの本であるということ。音部さんは現場で実績を上げてきた方ですが、もっと本能的に判断しているのかと思っていました。若手マーケターの研修にも取り組んでいると聞いていましたが、ようやく合点がいったところです。2つ目に、「仕組みのマネジメント」を強く意識していること。結果から学ぶ組織は「繰り返し」を意識していると書かれていますが、まさにその通り。仕組み化の重要性を実感しました。
3つ目に、パーセプション(認識)の動きに着目するのは「(生態学的)情報処理理論」に近いのかなと思いました。メーカーから刺激が飛んできて、消費者はそれを情報処理して答えを出すという単純なものでなく、背景にある状況や反応がもたらす影響をしっかり考えていかなければならない。本書はその点がしっかり考えられていました。
4つ目に、「いい商品」の定義が変わると市場創造が起きるというくだりは、我々なら「リフレーミング(文化変容)」と呼ぶところです。音部さんも引用していたエベレット・ロジャーズがまさに「新技術がそう簡単にイノベーションにはならない」と述べていますが、その点にマーケティングの大きなテーマがあると改めて気づきました。
5つ目に想起したのが、優れた起業家の意思決定ロジックを表した...