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社会学の視点

推し活が「イノベーションの民主化」を駆動する?

遠藤 薫氏(学習院大学)

「萌え」から「推し」へ 自分自身を賭けた情動

「推し」ですか?と、ヘアサロンでアシスタントの人が聞いてきた。「え?」ととまどっていると、「バッグのチャームが○○さんだから」とにこにこ笑う。○○さんは人気アニメのキャラである。とりあえず「推し」ネタで盛り上がる。

最近、「推し」があちこちでキーワードになっている。『推しの子』や『推しが武道館いってくれたら死ぬ』などのマンガだけでなく、『推しの王子様』(フジテレビ、2021年)や、『だから私は推しました』『トクサツガガガ』(NHK、2019年)などテレビドラマも増えている。NHKの「あさイチ」では、昨秋に放送した「推しライフ」特集が好評で、コーナー化した。日常のど真ん中でオタク文化がお茶を飲んでいるような感じが、シュールといえばシュールだな、と思う。

もともとは、AKB48のファンが応援するメンバーのことを「推しメン」と呼んだことから始まるといわれ、2011年の流行語大賞エントリーワードのひとつにも選ばれた。それが他のアイドルグループのファンにも広がり、「推し」という言葉はいまやカテゴリーを問わずに使われるようになっている。

類義語としては、この間まで、「萌え」が一般的だった。ただ、比較するとちょっと違う。『デジタル大辞泉』(小学館)によると、「萌え」は「ある人や...

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