ビービットが提唱するオフラインのない社会「アフターデジタル」。このアフターデジタルの社会で生き抜くために、日本のメーカー企業に必要な戦略、意識とはどのようなものなのか。また、その時消費者はいかなる軸で企業を評価するのか。執行役員CCOの藤井保文氏に聞いた。
すべてがデジタルでつながる アフターデジタルの世界観
ビービットが提唱している「アフターデジタル」という社会は、リアル世界がデジタル世界に包含される現象。ユーザーの「経験」や「体験」がいままで以上に社会の中心的な存在になるため、より良いUX(ユーザエクスペリエンス)を提供し、それを更新し続けることが求められる世界です。アフターデジタルを端的に表すと以下のようになります。
①モバイルやIoTでデジタル・リアル融合時代がくる
②行動データが大量に出てくる
③できる価値提供や顧客理解が変わる
④製品販売だけでは行動データが不十分、体験提供が必須
⑤「UXが良い→行動データが貯まる→UXがより良くなる」のループが競争原理になり、UXが良くないとデータも貯まらない
一番重要なのは①のように、デジタル・リアルの融合時代がくること。例えばこれまで、オフラインでタクシーをつかまえていたのが、配車アプリの活用やキャッシュレス決済での支払いなどにより、オンラインにつながりデータが残る。これにより実現するのが人の「行動データ」の取得です。
従来、企業は顧客の年齢や性別といった「属性データ」をもとにマーケティングを行ってきました。しかし、同じ人であっても、その日の気分や状況によって、考え方が異なることは大いにあります。属性データはそれを捉えることが難しかった。しかし行動データでは、その時の行動に対してのアクションを起こせるため、より高い価値を提供できます。つまり、行動データにより深い「顧客理解」が叶えられるのです。
このように、行動データが非常に重要となる中で「製品をつくって終わり」「販売して終わり」の企業は、その後の顧客の行動データを取得できないことになります。顧客と長い接点を築くために、商品やサービスを使い続けてもらう必要がある。そのためにより良いUXが必要になるのです。
良いUXを提供できれば、使い続ける顧客が増え、行動データが多く蓄積される。それをもとにさらに良いUXへとブラッシュアップし、ビジネスがグロースする。当社ではこれを「UXグロースモデル」と呼んでいますが、これこそが、アフターデジタルの社会において効果的なサイクルとなります。
「獲得」よりも「使用体験」に投資 販売後のジャーニー設計が重要
このサイクルを実現する上で、現在の日本のメーカーにとって...