ダイキン工業のコロナ禍でのコミュニケーション施策が、昨年度の「PRアワードグランプリ2020」(日本パブリックリレーションズ協会主催)に選出された。同社のコミュニケーション施策を率い、さらに9月には著書として、ブランドづくりの教科書『実務家ブランド論』(宣伝会議)を刊行した片山義丈氏に、空調機器の専業メーカーとしてのポジショニングを意識したダイキンのブランド戦略について聞いた。
※本記事は、社会情報大学院大学が2021年6月20日に開催したセミナー「ダイキン工業に学ぶ『コロナ禍を生き残るためのPR戦略』」の内容をもとに作成しています。
「空気の会社」を打ち出し総合家電メーカーと差別化を図る
「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開するグローバルな総合空調専業企業として、空気であらゆる課題を解決し、新しい価値を創造し続けているダイキン工業。同社のコロナ禍でのコミュニケーション施策が、日本パブリックリレーションズ協会が主催する「PRアワードグランプリ2020」にて、グランプリを獲得した。
同社で総務部広告宣伝グループ長・部長を務め、コミュニケーション施策を率いる片山義丈氏は、同社の戦略の背景には製品カテゴリーの課題があると話す。
「エアコンは買い替えサイクルが平均で約13年といわれ、生活者にとって日ごろは全く興味を持たれていない商品です。ところが、いざ壊れると買い替えまでの検討期間は1週間程度と短く、その時に純粋想起で3位以内に入っていないと選んでもらえません」(片山氏)。
圧倒的な広告出稿量とブランド力を持つ総合家電メーカーが競合となる中で、それらと同列に並んで勝つのは難しい。そこで「家電」のカテゴリーのほかに新しく「エアコン」というカテゴリーをつくろうと考えたという。
「当社では、まだエアコンへの関心が薄い層に対し、『空調総合メーカーダイキン=空気の会社』という認知を獲得するための取り組みを20年以上続けています。これがダイキンのブランドづくりの基礎となる部分です。『空気で答えを出す会社』は、約3年前にスローガンとして掲げました。空気のあらゆる課題に答えを出す企業であることを表現しています」と片山氏。
また、広報やPRといった枠を超えた統合的なコミュニケーションを行う理由について、もはや、広告だけ、PRだけ、Webサイトだけといったバラバラのコミュニケーションではメッセージが届きにくくなっており、「ペイド」「アーンド」「オウンド」を統合的に組み合わせ、各メディアの一番得意な分野を使い分けて情報を届ける必要があると述べる。
「例えば、オウンドメディアには良質なコンテンツがたくさんありますが、なかなか自発的に見に来てもらえません。そこでその情報を多くの方が訪問するサイトにアーンドメディア用に加工して置いてもらい...