マスに向けて情報を発信するテレビ。情報番組やスポーツ中継など、その発信において欠かせないのがアナウンサーの存在だ。毎日たくさんの視聴者へ向けて「言葉」を伝えている彼らは、どのような想いで「言葉」を紡いでいるのか。フジテレビアナウンサーの倉田大誠氏に考えを聞いた。
言葉で伝えることは難しい 日々が反省の連続
私がフジテレビに就職したのは「就職氷河期」と言われていた時代でした。最初の仕事は27時間テレビの「提供読み」。当時のフジテレビアナウンサーの登竜門と言われる仕事でしたが、とても緊張しました。初仕事だからと言って失敗は許されないので。
今年でアナウンサー生活も17年目を迎えますが、野球やサッカーをはじめ、今年は東京オリ・パラでも実況を務めさせていただきました。また、朝の情報番組のキャスターなど、多岐にわたる分野の番組に携わっています。
皆さんがご存知のとおり、アナウンサーの仕事は視聴者の方々に“声で”情報を届けることです。このような仕事をしていると、やはり、「どのように伝えればより伝わるのだろうか」と常に考えるようになります。
とはいえ、しっかりと伝えようとするあまり、直接的すぎる表現を選んでしまうと、誤解を招くリスクもあります。一方で慎重に言葉を選び過ぎると、回りくどくなりすぎて、本来伝えたい事が明確に伝わらないことも。
そういう意味では、日々挑戦と反省の連続。「伝える」ことの難しさを毎日感じながら過ごしています。
アナウンサーの仕事は事象に「言葉」を“添える”こと
アナウンサーはテレビに出演して情報を伝えるので、番組上での「主役」として、視聴者の方々から認識されることもあります。
ですが、私たちは決して主役ではありません。情報番組の場合はニュース、スポーツ実況はアスリートが主役です。アナウンサーの役割とは、主役である、情報や人などの事象に「言葉」を添えることだと思っています。
事象に「言葉」を添えるとはどういうことか。スポーツ実況を例としてお話ししたいと思います。
実況では、良い言葉がアナウンサーの口から発せられると、“名実況”と称されることがあります。しかし、実況を担当するアナウンサーが全員、「良いことを言ってやろう」と狙って実況席についているわけでは...