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「せんべい」と「転職」の関連性とは?ヤフーのビッグデータ活用術

ヤフー

ヤフーでは2017年に立ち上げた自社保有のデータを企業や自治体に役立てる「データフォレスト構想」のもとに実証実験を実施。その結果にもとづき、2019年にはデータソリューション事業を開始した。ヤフーのビックデータはどのように企業に活用されているのか、同社データソリューション事業本部の荻野剛至氏と辻井潤一氏に聞いた。

「データフォレスト構想」をもとにデータソリューションツールを開発

ヤフーは自社が保有するデータを活用し、多くの企業や自治体、研究機関の活動や課題解決をサポートする構想を2017年2月に発表。データを利活用した実証実験を重ねてきた。そうした活動を踏まえて、2019年10月にリリースされたのが、「DS.INSIGHT」をはじめとするヤフーのデータソリューション事業だ。

現在、提供するのは検索・人流を属性付きで分析できるデスクリサーチツール「DS.INSIGHT」、オーダーメイドの課題解決サービスである「DS.ANALYSIS」、スケーラブルなデータ活用を実現する「DS.API」の3つ。

『DS.INSIGHT』は、ヤフーの検索や人流データを使用者自身で分析するツール。『DS.ANALYSIS』は、企業の事業課題の解決に向けた分析を、ヤフーのデータを用いてアナリストが分析し、レポートとして納品するサービス。『DS.API』はブラウザ以外のシステムからもダイレクトに『DS.INSIGHT』の一部機能を利用できるサービス。現時点で導入企業数は着実に伸びているという。

捉えづらいニーズをつかめる 検索データの活用事例

1996年の創業以来、ヤフーでは約100ものサービスを提供しており、検索・メディア・ECなど多岐の領域にわたるビッグデータを保有している。具体的には興味関心事のデータとして検索や知恵袋、購買のデータとしてショッピングやオークション、そして位置データなどがある。データはすべて統計化して個人を識別できない形で企業や自治体と連携を行う。

代表的な検索データの強みについて「SNSに比べて偏りがなく様々な興味関心が対象になり、捉えづらいニーズを掴むことが可能である」と荻野氏は指摘【図表1】。具体的な活用の方向性として、①マーケティングの川上の部分で生活者のインサイトを把握し商品開発につなげる ②ヤフーの広告事業の延長でマーケティングコミュニケーションとして活用される、という2点を挙げる。

図表1 検索データを分析する理由
SNSと比べユーザーの偏りがなく、さまざまな興味関心が対象になる。したがって、捉えづらいニーズを抽出することが可能。

「商品企画段階でデータ活用している米菓メーカーのケースがあります。我々のツールには『時系列キーワード』という機能があり、検索されたワードの前後に何を調べていたのかがわかる。『おせんべい』の前後のワードを調べたところ『退職おせんべい』であることが判明【図表2】。退職する際に餞別として配っているのではと推測し、このメーカーでは『退職せんべい』という商品を企画しました」(荻野氏)。

図表2 DS.INSIGHT People 表示画面「おせんべい」と検索した人の時系列キーワード

またマーケティングコミュニケーションとして活用した事例としては、保険商材を扱っている企業の事例がある。コロナ禍において、顧客が直接店舗に来店する例が減った該当企業は、顧客との接点を維持するためにオウンドメディアやSNSのコンテンツに注力した。

ツール導入前は、保険にまつわるコンテンツを掲載していたが、導入後は顧客が「入園式服装 パパ」や「初孫祝い金」と検索していることを発見。そこから検索者を前者は子育て中の父親、後者を初孫が生まれた祖父母と断定。それぞれ他にどのような検索をしていたのか分析したところ、父親は車、祖父母はお宮参りといった検索をしていたことがわかり、興味に沿ったコンテンツを作成・配信したという。

さらにヤフーではこれらのツールを社会貢献にも活用している。2020年4月第1回目の緊急事態宣言が出された際には新型コロナウイルス感染症対策として「住民の不安やニーズ把握」、「地域内の人流データから外出自粛要請の効果測定」などに活用してもらうため、「DS.INSIGHT」を都道府県および全国の政令指定都市へ無償提供した。またデータ活用の人材育成のため学校法人に対して企業向けに比べて料金を半額にしたプラン「DS.INSIGHT for Academy」の提供も行っている。

多面的なペルソナを可視化 年度内に新サービスを提供

荻野氏は今後、ヤフーのビッグデータを活用しもらいたい業種や人として、製薬会社及びデジタルや分析を苦手としている人を挙げる。

「コロナ禍では、製薬会社のMRが医師とコミュニケーションを取れる機会が減っている。患者やその家族に情報を提供したいが病院に行くことができない状態が続いているので、我々のツールを使いコミュニケーションにつなげてもらいたい。またデジタルや分析を苦手としている方々に対しては、DXの打ち手として導入していただければと思っています」(荻野氏)。

また、今年度中に「DS.INSIGHT Persona」のリリースを予定している【図表3】。性別や年代、興味関心の条件を設定してセグメントを作成すると、そのセグメントの多面的なペルソナを可視化できるサービスで、ターゲットに即したユーザーの興味関心を見ることができる。マーケティング領域や商品企画担当者にとって、ダイレクトに課題解決できるツールだ。

図表3 DS.INSIGHT Persona



ヤフー
データソリューション事業本部
クライアントソリューション部
リーダー
荻野剛至氏

ヤフー
データソリューション事業本部
クライアントソリューション部
辻井潤一氏

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