百貨店ブランドをはじめ、インフルエンサーや個人などがD2Cブランドを立ち上げるケースが増えている。その領域はアパレルだけではなく、コスメなどのビューティー領域にも及び、すでに市場を追われるブランドも出現し始めた。人気のD2Cブランドにはどのような共通点があるのか。『WWDJAPAN』編集長の村上要氏が解説する。
Point
01 データ上の“正解”だけではビューティーの市場で生き残れない
02「なぜ、誰のために、運営するのか」を考え、発信できるブランドが強い
03 機能やセンスだけでは商品が売れない時代に
データ上の“正解”だけではビューティーの市場で生き残れない
日本のビューティ業界で活躍するOEM企業の進化は、本当に素晴らしいです。ブランドの製品の生産を請け負うOEM企業は、適時・適量の生産はもちろん、最近では“逆提案”できるような有効成分の開発までを担い、「ビューティ製品をプロデュースしたい!」と夢見るインフルエンサーやKOL、若手アントレプレナーにも寄り添っています。OEM企業の発展に伴い、自社の生産背景を手放してファブレス化するビューティ企業もあるほどです。
将来は自社で研究・開発・製造する超大手と、それらをOEM企業に託す中小企業という二極化が進行し、超大手はOEM企業の役割さえ担うことになると予測しています。
「誰もが、(ある程度は)簡単に」ビューティ製品がつくれる世の中では、データから読み取る“正解”に依存してきたブランドは、他との差別化が難しくなります。なぜならデータ上の“正解”は、ある程度訓練すれば誰でも発見できるものだから。SNSを分析したり、生活者の購入データを活用したりするだけのブランドは世の中に溢れ、D2CやEC専業などの“新しい”ブランドさえ、早くも市場からの撤退を余儀なくされています。
そんな中では、誰でも考えられることを実行するだけでは差別化できません。どの業界も同じですが、大事なのはパーパス。「なぜ私は、コレをつくりたいのか?」や「私は、コレで、誰を、どんな風に幸せにしたいのか?」と考え、発信することが重要になります。
D2Cで成功するのはパーパスを体現したブランド
ビューティ業界で成功しているD2Cブランドは、このパーパスを練り上げ発信し続けています。
例えば「バルクオム」の根底にあるのは、「シンプルなスキンケアで、世の多くの男性に、もうちょっと“心地よい”日常を送って欲しい」というパーパス。シンプルなパッケージや価格設定、定期便という...