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社会学の視点

アテンションエコノミー時代の映画のネタバレと認知効果

遠藤 薫氏(学習院大学)

布教?ネタバレ?新規ファン獲得へのバランス

2021年6月、「ファスト映画」と呼ばれる違法な動画をネットに投稿していた男女3人が逮捕された。「ファスト映画」とは、他者が著作権をもつ映画の映像や静止画を無断で使用し、字幕やナレーションをつけてあらすじを紹介する、10分程度の短い動画をいうらしい。私は観たことがないのだが、確かに、「観に行きたいけど時間がない」「興味はあるけれど、面白くなかったら損した気がする」なんて悩む人には魅力的かもしれない。

というわけでファスト映画はアクセス数を稼げる。「アテンションエコノミー」(多くの人の関心を惹くことが収入につながる経済)といわれる現代においては、アクセス数がサイトの広告収入につながる。今回の事例でもかなりの利益を得ていたようだ。

だとすると、視聴者にも投稿者にもメリットがあるのかもしれない。これにより認知を得て、最終的には映画の注目が高まるので、広告効果があるのだと指摘する人もいる。しかし、映像の無断使用は端的に著作権侵害である。また、視聴者が短縮版だけで満足してしまい、映画館に足を運ばないおそれがある。短縮版のネタバレによって、映画への関心が薄れてしまうかもしれない。

このような構図は海賊版や二次創作の問題でも現れる。アテンションエコノミーの時代には...

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