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現代における「顧客理解」方法と実践

インサイトを企画にジャンプさせる、月刊『Mart』編集者の読者理解

小松伸司氏(光文社)

読者インサイトに刺さる提案ができるからこそ、読者との心の絆を深めてきた雑誌メディア。そんなメディア編集者に、「顧客理解」は欠かせない。人々の気持ちが揺れ動く時代、雑誌編集者はいかに読者の心をとらえているのか。月刊『Mart』編集長の小松伸司氏へのインタビューから、読者理解に迫る。

光文社
月刊『Mart』編集長
小松伸司氏

1999年光文社入社。『FLASH』編集部を経て、2004年10月『Mart』創刊メンバー。第一次『Mart』ブームの中核として、数々のヒット企画を担う。2018年『女性自身』編集部を経て、2019年6月『Mart』編集部に復帰し、同年11月より現職。

月刊『Mart』編集長である小松伸司氏は、1999年に光文社に入社以来、数々の雑誌の編集を経験。2004年の『Mart』立ち上げ時のメンバーでもある。

光文社には、読者へのリサーチによってニーズをくみ取り、読者に寄り添った企画を立てる「読者調査(通称:ドクチョウ)」の文化が伝統的に存在し、各編集部に継承されている。

この文化は『Mart』にも根付いている。現在、『Mart』には約6000名の読者会員が存在し、ニーズを理解する上での大きな武器になっているという。編集部では会員の「住所」や「家族構成」「資格・趣味」といった情報を管理しており、誌面に関するアンケート調査を実施するなどのコミュニケーションをとっている。

「例えば、以前は表紙のカラーを会員の方へのアンケートで決定したことも。私たちにとって読者の好みを知る機会にもなりますし、会員の方に“一緒に雑誌をつくっている”という気持ちを持っていただくきっかけになり、より雑誌に愛着を持っていただけるのではないかと考えています」と小松氏は会員とのつながりについて話した。

本人にとっては当たり前の日常から読者インサイトを探る

タグラインである「『私の半径5m』に幸せがある」が示すように、家のまわりの「暮らしを楽しむ」ことができるような情報を提供する『Mart』がコロナ禍以前に行っていたのが、読者への「自宅訪問インタビュー」だ。

「“Make yourself at home”という言葉もありますが、家は素の自分が出せる場所。自宅で話を聞くからこそ得られる本音もあります」と小松氏。

また、自宅にある家具や雑貨など、本人にとっては日常すぎて当たり前になっていることが企画のアイデアにつながることもある。このような読者のリアルが可視化されている自宅は、非常に重要な情報源となる。

印象に残っている話として小松氏は、室内にインテリアとして飾られていた植物のエピソードがあるという。

「ほとんどが人工のアーティフィシャルグリーンの中、ひとつだけ本物の植物が紛れていました。理由を聞くと、すべての世話をするのは大変だし費用もかかる。でも、ひとつ本物が混ざっていれば全体的に本物な気分になる、と。このような深い心理まで知ることができるのは貴重ですね」と話す。

緊急事態宣言下など、自宅訪問が難しいタイミングではZoomなどのオンラインを活用してインタビューを実施。現地を訪れるのと比較すると空気感などの情報量は減るが、画面越しに室内の様子や、話に出た物の実物を映してもらうなど、電話やメールでは得られない情報が得られているという。

「表情や声色も重要な情報。文面になると、丁寧に書いてくださる方ほどすべてがフラットになってしまいがちです。盛り上がりや...

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