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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

訴求すべきは視覚?感情? 映像広告制作のポイントを解説

牧野 惇氏

    映像クリエイティブのポイント

    ☑映像表現は「感情」より「視覚」にインパクトを残す

    ☑広告制作の過程には「試行錯誤」のための余白を

    ☑内容を予算に合った表現手法を提案できるのも、ディレクターの強み

文字、コンテ上は成り立つ描写 動画になると穴が見えることも

「『映像表現』のクリエイティブ・ディレクション」というテーマですが、僕は映像表現の監督(ディレクター)という立場で表現に携わっています。クライアントの担当者さんと、映像のディレクターが直接対面する機会は、通常のCM制作の現場だと撮影の現場や試写のタイミングに限られると思います。今回はこのような機会をいただいたので、僕なりの現場の声をお伝えしてみようと思います。

事業会社側の方は映像ディレクターの仕事についてあまり知らないと思います。なので、まずは僕の普段の仕事の発注からの流れを説明したいと思います。

広告制作のオーソドックスのフローは、広告主から広告のコンセプトと目的について代理店などのクリエイティブチームにプレゼンがあり、それをベースにクリエイティブチームがアイデアを考え、そのアイデアの中で広告主の伝えたいコンセプトや目的がもっとも体現されていると判断された企画が選ばれ、制作する、というものだと思います。

僕の仕事はこの後からがスタート。その選ばれたアイデアをどのような形にしたらもっと魅力的になるかを考え、具体的に映像に落とし込む上での設計を考えていきます。クリエイティブチームから伝えてもらったアイデアの時点で、すでに“広告主の想い”はしっかりと体現されているはずなので、企画自体に口を挟むような機会はほぼないです。ですが、文字による説明と企画コンテ上の少ない絵では成立しているように見えていた企画が、いざ動画になった時に伝えたいことが伝わりにくくなっていることもあります。

例えば企画コンテの中で、「主人公とライバルが競い合う」みたいなことがサラッと一コマで書かれていたとします。そうなると、まず主人公にライバルがいるという図式をそれまでの動画内で説明し、「競い合う」という表現についても、肉体的に競い合わせるのか、精神的に競い合わせるのか、もっと間接的に競い合わせるのかなど、色々な準備要素が発生し、結局一コマでは足りなくなってしまいます。企画書の中では分かりづらくなっている穴を埋めていく作業も僕の立場では重要な仕事だと思っています。

これらの過程を経て、クライアントとクリエイティブチームで握った表現アイデアをディレクターが演出コンテへと具体化させていきます。

サービスを売る目的の広告は「記憶に残るもの」に

何かのサービスを売る目的の広告は、消費者の目を惹きつけたり、記憶に残したりすることが大事です。そのポイントが直接そのサービスに関係ない点であっても、消費者に何かしらの影響を与えて、ふとその内容を思い出させることが結果的に広告になると思っています。広告したい商品やサービスによっては、動画の中で色々な情報の説明が必要なものもあります。その説明に尺を取りすぎると、商品的にはすごく真っ当な広告になるのですが、内容が説明くさくて印象は薄くなってしまいがちです。

ひとつのものを見続けることへの集中力が希薄化しているといわれる現代に、あまり多くの説明的なカットを入れてしまうと上手く注意がひけず、見てもらえないこともしばしばです。広告するものの内容によりますが、情報は必要最低限に抑えて、演出面に注力した方が結果的に注意を引き、WebサイトなどのPV数にもつながると思います。

予算に合う表現手法 提案できるのも監督の強み

伝える内容によって、どういった手法にするかも重要だと思います。

僕がアサインされた時点では手法はほぼ決まっています。稀にクライアント内での意見の相違があり、アニメーションから実写への大きな舵切りなどもありますが、僕はアニメーションから実写まで幅広く制作してきたので、その場合でも柔軟に対応できる強みはあります。手法の選定の段階ではディレクターはアサインされていないのですが、僕の場合は、この段階でアサインしてもらった方が色々な手法の提案ができると思っています。

アニメーションは、“デザイン”や“動き”や“動きと音楽とのシンクロ”など、独特な表現にするための要素が多くあります。また、実写は登場人物の表情や演技など、生の素直なエモーショナルな感動が伝わりやすいと思います。実写とアニメーションの合体はその両方の良いところを合わせられます。このように手法ごとに長所が違うので、どういった訴求内容かによって表現手法は選ばれるべきだと思っています。

また広告を制作する上では、予算も大きな要素のひとつです。この広告予算という要素も手法の選定に大きく関わってくることです。予算が限られているときは、その予算に合った別の手法を提案した方が訴求内容をリッチに表現できることもあります。このような判断は制作側でしか分からないことなので、そういった理由でも、もう少し早い段階で...

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