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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

「一億総クリエイター社会」広告担当の存在価値はどこにあるのか

廣瀬文栄氏(クボタ)

    映像クリエイティブのポイント

    ☑クリエイティブの究極の目的は、“経営課題の解決”

    ☑既存ファンを裏切るようなコミュニケーションはしない

    ☑リリースの最後の判断は、「自分の心が揺さぶられるか」

一人でも多くの人に価値を知ってもらうために

この私が「クリエイティブ・ディレクション」を語る!?筆を進めている今この瞬間も、皆さんの期待に応える内容が語れるのか、正直自信がありません(笑)。

一方で、2014年からクボタのブランドコミュニケーションの責任者として「どうすればクボタブランドの価値を、一人でも多くの方々に知ってもらえるのか」を考え、悩み続けてきたことは、揺らぐことのない事実であり、唯一といっていい私の誇りです。コロナによって、複雑かつ不確実な情勢に拍車がかかっています。

また、「一億総クリエイター時代」において、企業の広告担当やプロのクリエイターの存在価値はどこにあるのか。今だからこそ、近視眼的に陥らない、真の意味でのクリエイティブについて、私が学んできたことを形にしながら、皆さんと考える機会にできればと思います。

クリエイティブの本質は「経営課題の解決」

クリエイティブで求められることは、何ですか?と問われたら、私は迷わず「経営課題の解決」である、と答えます。

私たち広告宣伝やマーケティングの担当者は、どうしても「映像やクリエイティブを“つくる”」ことばかりに目が奪われがちです。「世の中に受けるCMは?」「100万回再生されるには?」と、議論が白熱すればするほど、クリエイティブをつくることが目的化し、そこから抜け出せなくなるのが実態です。しかし、追いかけているKPIや目標は、本当に達成、解決しなければならないでしょうか。

企業の究極の目標は、「持続的に存続し続けること」です。企業は、社会に価値を提供し、認められ、選ばれ続けなくてはなりません。そのために多くの企業が日夜、研究開発・サービス開発に努めています。

では、広告宣伝やマーケティング担当者は何をすべきか。それは、企業や商品・サービスの提供価値を、コミュニケーションを通じて、社会やお客さまに届けることが最大のミッションといえます。

そのクリエイティブは経営や事業上の課題解決につながっているのか。そうでないなら費用と時間をかけて制作する必要はありません。自分が経営者なら、そのクリエイティブに投資するのか、問いかけてみることが重要です。どんな経営上、あるいは事業上の課題を解決しなければならないのか。その本質を決して誤ることなく、目標設定を行う。それこそが、クリエイティブの本質だと考えます。

ブランドを愛する既存のファンを裏切るようなことはしない

では、実際クリエイティブを制作する上で、何を大切にしたらいいのか。私たち広告担当者が守らねばならない要諦とは何でしょうか。

正直、先ほどの経営課題の解決が図れるクリエイティブならば、どんな表現でもいいと思っています。広告のターゲット、獲得したいKPI、展開するメディアに応じて、柔軟性を持ちつつ、創造性と独自性を追求すべきです。それこそ、大船に乗った気持ちでプロのクリエイターに任せたいところ。だからこそ、広告担当者は「絶対に譲ってはいけないルール」を自分たちに課すことが重要です。

クリエイティブにおいて、私が常に大切にしていることは「クボタらしさを失わないこと」、「必ずファクトに立脚していること」、そして「既存のお客さまやステークホルダーを裏切らないこと」です。クボタは2017年からコミュニケーションスローガン「壁がある。だから、行く」のもと戦略的統合型コミュニケーションを展開しています。1890年の創業以来、自らの事業領域でしっかりとお客さまと向き合い、一定のポジションを構築してきました。

しかし、そのことに一生懸命になりすぎた結果、「生きる上で不可欠な食料・水・環境領域で社会課題解決を行っている」ことや、「グローバルに現地に根差した事業展開をしている」ことを広く生活者の方々に、お伝えできていなかったことに気づきました。経営陣と約1年にわたる議論を積み重ね、ようやくキャンペーン開始に向けて準備している折、ある営業企画の若手が私に話しかけてくれました。

「キャンペーンはすごく楽しみだし、期待しています!でも今までクボタブランドを信頼し、愛してくれているお客さまを裏切るようなコミュニケーションだけはしないでほしい」と。

この言葉は、私の胸にぐさりと突き刺さりました。既存のファンを裏切ってまで実施するコミュニケーションなど必要ない。むしろ既存のファンに対して、新たな一面として、驚きと感動を持っていただく。そして新規のファンとつながりながら、より多くの生活者と広く深くつながっていくことが重要だと認識しました。今でも絶対に譲ってはいけないクボタのクリエイティブルールであり、そこを守りながら、どこまでも自由である。そんなクリエイティブづくりを目指しています。

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