コロナがもたらす「家計不安」 続く節約志向に、企業がとるべき対応とは
新型コロナウイルス感染拡大から1年超、生活者の心理はどのように移り変わってきたのだろうか。2020年3月下旬から週次で定点調査を行ってきたインテージのデータを基に、同社生活者研究センター長、田中宏昌氏が解説する。
「不安」と消費者 生活、健康、将来の不安に寄り添う
新型コロナウイルスの世界的な流行は、生活者の価値観を大きく揺るがした。その結果、社会を構成する組織や機関に対する信頼も大きく変動する事態が生まれている。エデルマン・ジャパンが2001年から実施している世界28カ国、約3万3000人を対象に実施した「エデルマン・トラストバロメーター」の2021年の結果をもとに、森田尚子氏と廣野貴士氏が解説する。
「不安」とは人間の持つ普遍的な感情であり、「不安」の裏返しにあるのが「信頼」である。なぜなら、人は何かを信頼することで不安を減らすことができるからだ。逆に言えば、不安を解消するためには信頼を醸成する必要がある。エデルマンでは、「PR=パブリックとリレーションを築く」中で、究極のリレーションシップは「信頼」であることをPRの原点として掲げている。
企業、政府、NGO、メディアといった「組織」が、時代の変化の中でどのようにして世の中と信頼関係を築くべきかを考察するため、過去20年にわたり「エデルマン・トラストバロメーター」調査を世界各国で定点的に実施し、各国の生活者による組織に対する信頼度を測ってきた。通常グローバルで1月に発表されるレポートに加え、コロナ禍では5月の中間レポート、複数のスペシャルレポートと調査数を増やし、この世界的未曾有の状況下における人々の信頼度の推移を調べた。
気候変動、医療体制、経済格差、人権問題といった社会的課題はパンデミック以前から存在し、ミレニアル世代やZ世代の台頭により様々な課題への意識が高まっていた。しかし多くの生活者にとっては自分ゴト化するまでには至っていなかったのではないだろうか。ところが、突然突きつけられたパンデミックやそれに伴う不安感の高まりによって、それらを自分ゴトとして実感させられることになった。
特に人類にとって未知かつコントロールできない新型ウイルスの発生は、これからの地球や環境の在り方を想起させた。また、生活者は自分や家族の命にかかわる医学的・科学的な情報や、突然変化した生活スタイルに関する正しい情報を求めたが、実際にはSNSでも、さらにトラディショナルメディアであっても風評やフェイクニュースが蔓延し、多くの生活者が苛立ちと不安を募らせている。
その結果、2020年の秋に実施した同調査では、「一年前(コロナ前)に比べてより重要になった課題」が、医療制度(+59ポイント)、フェイクニュース(+53ポイント)、社会・経済格差(+49ポイント)、気候変動(+44ポイント)(いずれも日本国内の数値)という結果となり、日本人の社会問題に対する意識が大きく変化したことがわかる。
不安の蔓延する世界では、より身近な存在を信頼する傾向にある。2021年5月に実施した同調査結果では、日本人の政府への...