エデルマン・トラストバロメーターから読み解く、コロナ禍の「信頼」
新型コロナウイルスの世界的な流行は、生活者の価値観を大きく揺るがした。その結果、社会を構成する組織や機関に対する信頼も大きく変動する事態が生まれている。エデルマン・ジャパンが2001年から実施している世界28カ国、約3万3000人を対象に実施した「エデルマン・トラストバロメーター」の2021年の結果をもとに、森田尚子氏と廣野貴士氏が解説する。
「不安」と消費者 生活、健康、将来の不安に寄り添う
新型コロナウイルス感染拡大から1年超、生活者の心理はどのように移り変わってきたのだろうか。2020年3月下旬から週次で定点調査を行ってきたインテージのデータを基に、同社生活者研究センター長、田中宏昌氏が解説する。
インテージでは国内の新型コロナ感染拡大が顕著になった2020年3月の最終週から毎週、日本全国の当社アンケートモニターを対象に新型コロナに関する定点調査を継続して実施しています。調査項目は生活者のコロナ下における「不安」や「感染予防・衛生行動」などが中心。本稿では、これまでの調査結果や推移を振り返りつつ、生活者の今、そして近未来を見据え企業が取り組むべき施策のヒントについて考察します。
「感染不安」については、新規感染者の増減と密接に関連した動きになっており、緊急事態宣やまん延防止等重点措置が発令されているなか、7割程度の方が不安を抱いている状態です【図表1】。
また、「家計不安」についても昨年7月以降、6割付近に高止まりしています。新型コロナの感染拡大同様に、景気や家計の回復もなかなか見通せない状況の中、先が「見えない」ことが根強い不安に繋がっていると考えています。家庭の暮らし向きについても先の見通しは悪く、「節約意識」とともにお財布の紐が緩むのにはまだまだ時間がかかりそうです。
さらに、「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」に対する不安も依然として高いスコアのまま。感染力の強い変異株の拡大もあり、感染リスクの高い外出行動への警戒心が見て取れます。
こうした「感染不安」によって、生活者の買い物行動には次の3つの変化が生じています。
スーパーマーケットでの買い物は、新規感染者数の増加による感染リスクに連動。リスクが高い時期はまとめ買いが増え、頻度は少なく、1回あたりの金額は増える傾向があります。
混雑を避けて、午前中や夕方早めなど、買い物客が比較的少ない時間にシフト。また、在宅勤務やリモートワークの活用によって、仕事の隙間時間に買い物をするスタイルも見られるようです。
3密回避や非接触を求めて、ECでの買い物は大きく伸長しています。当社の消費者パネルデータ(SCI(※1))では新型コロナ感染拡大前(2020年1月20日~2月23日)の平均値を100とした時の数値と比較すると...