SNSの声は、本当に日本の縮図?ネット言論の代表性を問う
日本でも利用者が増すSNS。企業がマーケティングにSNSの声を活用したり、炎上に対応したりといったケースもよく見られているが、SNSで発信されている声を日本の世論の縮図ととらえることに問題はないのか。ネット炎上、コミュニティなどを専門分野とする評論家の真鍋厚氏が、現在の日本におけるSNSの声を説明する。
ネット世論と広告炎上
強いメッセージの発信は“炎上”を引き起こす可能性もある。そのため広告制作の場においては、企業姿勢と炎上リスクを天秤にかけ、安全策をとるケースも存在するだろう。ここでは、炎上を恐れず企業が正しいと考える姿勢を貫いて広告として発信した事例を、近年の海外広告賞受賞作品から振り返る。
2018年9月インド最高裁判所により、約160年前に制定された同性間の性行為を禁止する法律が満場一致で違憲とされた。しかしLGBTQのコミュニティは依然、社会から孤立したまま。インド最大の英字日刊紙タイムズ・オブ・インディアは、2020年5月17日の国際反ホモフォビアデーをきっかけに、誌面にLGBTQに関わる記事や“求人広告”を掲載。社会として受け入れる姿勢を示した。
フェイクニュース、気候変動、難民問題などの問題が山積する社会情勢を受け、ドイツの出版社SPIEGELが実施したキャンペーン。「私たちはこの世界に対して鏡を掲げる」という、社名の“SPIEGEL”(ドイツ語で鏡)とかけたメッセージと共に、世界的ニュースの写真を鏡のように反転させたものに加工。物事には一見しただけではわからない一面が存在すると表現した。ポスターは屋外広告などで掲示され、3200万のメディアインプレッションを獲得した。
レバノンでは2019年9月、反政府デモが激化。数十万人が首都のベイルートなどに押し寄せ、乱闘や発砲が繰り返された。暴力以外の解決を求めたレバノンの日刊紙An-Naharは新聞の一面に“新しい国歌”を掲載。「birthplace of men(男性発祥の地)」という歌詞を「birthplace of men and women(男性と女性発祥の地)」に変更した。新しい国歌は新聞社のオフィス壁面にも掲示され、ラジオでは歌手のキャロル・サマハの歌声が流れた。
イギリスの公共放送局であるChannel4の動画「Complaints Welcome」は、1日に何百件と寄せられる視聴者からのクレームを、実際に苦情を受けた出演者本人たちが紹介。それでも“苦情を歓迎します”と、同局への意見を求めるというものだ。Channel4は若者やマイノリティ、知識層をターゲットに番組編成を行うなど、多様性を受け入れ、革新的な発信をしてきたテレビ局。同社は「物議を醸すことも、我々の仕事のひとつ」と表明している。