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ネット世論と広告炎上

SNSの声は、本当に日本の縮図?ネット言論の代表性を問う

真鍋 厚氏

日本でも利用者が増すSNS。企業がマーケティングにSNSの声を活用したり、炎上に対応したりといったケースもよく見られているが、SNSで発信されている声を日本の世論の縮図ととらえることに問題はないのか。ネット炎上、コミュニティなどを専門分野とする評論家の真鍋厚氏が、現在の日本におけるSNSの声を説明する。

POINT

☑「感情に突き刺さる」ものへの過剰反応の増加。

☑主観の神聖化と攻撃の正当化。

☑発信者の感受性も常時モニタリングされる時代。

個人の快・不快が物差しに 活発化するキャンセル・カルチャー

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まってから、インターネットにおける炎上の様子に大きな変化が見られるようになりました。その変化とは、リアリティ番組の代名詞ともいえる「テラスハウス」(フジテレビ系)の事件が象徴的ですが、もはや事実であるかどうかは関係がなく「感情に突き刺さる」出来事に過剰に反応する傾向です。

しかも、この場合の「感情」とは個々人によって異なる食べ物の好き嫌いのようなものであり、恐るべきことに何ら社会性を帯びてはいないのです。今や信頼できる唯一の物差しは自らの快・不快の感覚だけというわけです。

この傾向に関して、わかりやすい事例を挙げます。2020年11月にナイキのCMが炎上しました。「動かしつづける。自分を。未来を。The Future Isn’t Waiting.│Nike」というタイトルの動画です。外国にルーツを持つ3人の少女がアイデンティティや差別などの問題を抱えながら、サッカーというスポーツを通して、その困難をともに乗り越えていくドラマを主軸にしたものでしたが、「在日問題」が扱われていたことからSNS上でこのCMに対して「日本人ヘイト」だと怒り狂う人々が現れました。

しかし、ナイキが公式サイトで「アスリートのリアルな実体験に基づいたストーリー」と説明しているように、人種差別の告発というよりもマイノリティに寄り添うブランディングの一環にすぎません。それは、同社による性的マイノリティの人たちをサポートするコレクションの発表や、これまでも似たような、炎上も覚悟したブランディングを展開してきていることに十分に表れています。

ですが、日本の一部の人々は、自分たちがまるでレイシストのように描かれているとして「被害者感情」を持ちました。どこの世界にもあるであろう差別やいじめの風景を、日本社会特有の排他性に対する非難と受け取ったのです。なかには不買運動を呼び掛ける...

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