編集者視点で考えるメディアの未来─グーテンベルクオーケストラ 菅付雅信氏
メディアビジネスの未来はどうなるのか?との問いに、「イノベーティヴな答えを期待するのはやめたほうがいい」と語る菅付雅信氏。多くのメディアのイノベーションが誕生時はビジネスを目的に発明されたものではないからだという。それでは「メディアの未来はどうなるのか?」。“編集者”としてメディアビジネスの域を超えて活動する、同氏が考えるメディアの行く末とは。
かつてテレビCMを中心にブランドコミュニケーションを行ってきたネスレ日本。2010年にデジタル変革を行った同社のメディア活用の方針について、媒体統括部の野澤英隆氏に話を聞いた。
2010年には他社に先駆けオウンドメディアの「ネスレアミューズ」を開設。その後も、アドベリフィケーション対応に、広告効果のダッシュボード化など、他社に先駆けて新しいマーケティング・コミュニケーション活動に取り組んできたネスレ日本。そんな同社だが1970~80年代には「違いがわかる男のゴールドブレンド」のテレビCMが話題になるなど、かつてはマス広告に多く出稿をしていた。
現在、媒体統括部の統括部長を務め、デジタル広告にも精通する野澤英隆氏は、1985年の入社翌年から宣伝部で仕事をしていた経験を持つ。
「約35年前、その頃の宣伝部は『製作企画』、『媒体』、『セールスプロモーション』の3課で構成されていました。当時の『宣伝部』が現在の『媒体統括部』の前身ですが、その役割は大きく変化しました」と話す。
1990年代の初めには「宣伝部」の組織は解体し、広告の製作やセールスプロモーションは各ブランドチームの直下に置かれることになる。メディアごとに出稿を行う、高い専門性が求められた「媒体」だけが「媒体統括部」という名称で継続された形だ。
ネスカフェ事業部等でブランドマーケティングの担当を経て、同氏が現在の媒体統括部部長としてマーケティング・コミュニケーションの業務に戻ってきたのは2009年。当初デジタルメディアが媒体費に占める割合は2%程度で、ほとんどがテレビ・新聞・雑誌への出稿だったという。もちろん、ここ数年で大幅なデジタルシフトが起きた。媒体統括部に求められる専門性も、より高まっているという。
媒体統括部の役割は、ペイドメディアのプランニングを中心としながら、オウンドメディアやアーンドメディアも含め、消費者コミュニケーションに関わるあらゆる機能を統括すること。これまでには広報やセールスプロモーションのユニットなどが、統合・分離してきた。また同社では商品パッケージやPOPもオウンドメディアのひとつとして捉えており、媒体統括部内に存在していたこともある。現在でもパッケージプランニングのユニットは同部の直下にある。
「あらゆるメディアと機能の相関を考えながら、この10年ほど変革を繰り返しています。組織を固定することよりも、重要なのは消費者にどうコミュニケーションしていくか。効果と効率を考えたときに最適な組織は何かと逆算し、フレキシブルに考えるようにしています」。
媒体統括部で現在メディアプランニングを担当しているのは6名。メディア別と...