編集者視点で考えるメディアの未来─グーテンベルクオーケストラ 菅付雅信氏
メディアビジネスの未来はどうなるのか?との問いに、「イノベーティヴな答えを期待するのはやめたほうがいい」と語る菅付雅信氏。多くのメディアのイノベーションが誕生時はビジネスを目的に発明されたものではないからだという。それでは「メディアの未来はどうなるのか?」。“編集者”としてメディアビジネスの域を超えて活動する、同氏が考えるメディアの行く末とは。
広告プランニングの新・潮流 「新・メディアの教科書」
「ネット広告費がテレビ広告費を追い抜いた」。2020年3月に発表された2019年の日本の広告費は大きな話題になった。それから1年、2020年の広告費ではネット広告費がマス4媒体費と、ほぼ並ぶまでに成長を遂げている。この統計データから宣伝担当者はどう潮流を読み解き、メディアプランニングに生かせばいいのか。
電通が2月に報告した「2020年日本の広告費」によると、総広告費は前年比88.8%の6兆1594億円だった。
東日本大震災が発生した2011年以来のマイナス成長が話題となったが、電通メディアイノベーションラボの北原氏は、「市場規模の推移だけでなく、個々のメディアで何が起きているのか?を分析することも必要。時系列で見ていくとメディアプランニングの参考になる知見も得られるはず」と話す。
ただコロナ禍の影響を受けた2020年は、これまでの延長線では語れない1年。外出自粛を受け、店頭やイベントに誘導することを目的とした広告は減少。同氏によると、なかでも特徴的なのは「プロモーションメディア広告費」(前年比75.4%)だという。各種イベントが中止となり、当然「イベント・展示・映像ほか」は前年比61.1%と大きく減少。
しかしリアルな顧客接点が減少したことで、活用可能性を見出されたプロモーションメディアもある。それが「DM(ダイレクトメール)」だ。DMは前年比90.3%と、他媒体に比べれば、下げ幅は小さく踏みとどまっている。
「移動が制限されたとき、個人にアプローチする手段はEメールか、DMのいずれかになってしまった。コロナ禍以前から、物理的なコミュニケーション手段であるダイレクトメールの有用性が着目され始めていましたが、その特性が改めて見直された結果だと思います」(北原氏)。
またプロモーションメディアだけでなく、多くのメディアが売上減少となった2020年だが、相変わらずインターネット広告費は前年比105%の成長を遂げた。2019年は前年比119%の成長だったことを考えれば、その勢いは鈍化したものの、まだ成長フェーズにあるといえそうだ。
ここで注目すべきはインターネット広告費の内訳だ。そこから今、メディアの世界で起きている変化が読み解けるからだ。
例えばインターネット広告費について、マス四媒体由来のデジタル広告費は803億円、前年比112.3%と二桁成長を記録。また2019年から新たに項目に加わった「物販ECプラットフォーム広告費」は124.2%と、最も大きく...