書籍『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』の中で、「“1日3食ちゃんと”は必要か」「“手料理=愛情のバロメーター”ではない」といった、従来の固定観念にとらわれない発信をしている料理研究家のコウケンテツ氏。このような発信を行う背景には、どのような思いがあるのかを聞いた。
“しんどい”思いを共有し寄り添うメッセージを発信
2020年9月に著書『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』を発売した料理研究家のコウケンテツ氏。本書でコウ氏は、料理や家事をたったひとりでこなし、“しんどい”と感じている人々に向けて、「作らないことに罪悪感を抱く必要はない」「頑張らなくてよい」といったメッセージを発信している。
このような書籍を出そうと考えた経緯についてコウ氏は、さまざまな要因があるが、ひとつはコウ氏自身が毎日“きちんと”料理をすることに限界を感じていたためであるという。
「もともと私は料理研究家として、『1日3食きっちりつくりましょう』や『あなたの愛情のこもった手料理が家族の健康をつくります』といった発信をしてきました。しかし、私自身子どもが生まれ日々料理をするなかで『これは無理!心身ともに疲れ果てる』と感じるようになったのです」とコウ氏。5~6年ほど前から、講演会でそのような本音トークをしはじめたところ、それまでの講演と比較し、聴講者のリアクションが大きく、好評だったという。
「講演会の様子を見て、『私自身も皆さんも、しんどい気持ちを共有したかったんだ』と気づきました。この経験から、講演会で話しているような本音を書籍としてまとめたいと思うように。他にも多くの人から“家事がしんどくて仕方がない”といった声を聞くこともあり、このような人にもメッセージを伝えたいと感じていました」。
本書で一番伝えたかったメッセージについてコウ氏は次のように話す。
「しんどいと感じ、追い詰められている人々に...