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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

「共感」を醸成する情報発信(1)パーパス基軸のストーリーテリング

小西みさを氏(AStory代表)

情報があふれる時代において、無機質で画一的なメッセージは届きづらくなっています。企業コミュニケーションにおいても正確性だけでなく、人の心に響き、心を揺さぶる、発信者側の人格までが伝わる温度感が求められています。しかし、そうしたコミュニケーションは表現技法の問題ではなく、何を発信すべきか?「What」の部分から見直すことも必要です。情報発信の方法や、表現の仕方について、ブランドコミュニケーションのプロフェッショナル2人に聞きました。

    共感を醸成する情報発信の極意

    ☑自社の存在意義を理解し、個々の従業員が自らの業務に落とし込む。

    ☑自身の強みを棚卸したうえで、独自性のあるストーリーをつくりこむことは、企業だけでなく、個人が発信する場合も同様に重要。

    ☑社会に求められる情報発信のポイントは、時事性・独自性・意外性・新規性・インパクトのあるビジュアルの5つ。

共感を呼ぶストーリーは、パーパスから逆算してつくる

皆さんは、ご自分の会社の「パーパス」をご存知ですか。パーパスと聞くと「目的」という日本語訳を想像されるかもしれませんが、実は、パーパスには「物事が存在する意義」という大事な意味があります。

人々からの認知を得て成長している企業は共通して、常に自社の存在意義を明確にし、それを社会に伝え続けているという特徴があります。アップル、アマゾン、アルファベット(グーグル)のような急成長した企業もそのうちの1社です。

昨今、市場にはモノがあふれ、SNSをはじめインターネット上の様々なチャネルの普及に伴い、情報が飛び交っています。消費者の選択肢、判断基準も無限大に広がり、この中で選ばれるブランドになるのはが大変困難な時代になっています。

そのような環境において、企業は存在意義を明確にし、ステークホルダー(利害関係者)の共感を呼ぶ努力が求められます。もちろん価格で選択する消費者も相変わらず多いかもしれませんが、長期的な視点で会社の商品やサービスを使い続けてもらうという意味では、会社の在り方への共感度が、消費者の選択肢に大きな影響を及ぼすようになります。

ひと言で共感を得ると言っても簡単なことではありませんが、まずは従業員一人ひとりが自社のブランドを体現することが重要です。米国の経営学者、デイヴィッド・アーカー氏が「社員がそのブランドを“信じ”て、すべての顧客接点においてそのブランドを実演しない限り、ブランドの約束は果たされない」と言ったように、上辺だけのコミュニケーション戦略等を実行しただけでは、なかなか共感は得られにくいと考えられます。

そのためには、個々の従業員が会社の存在意義を理解し、その存在意義をベースに自分の仕事はどのような位置づけなのか、理解することが重要です。ただ単に任された仕事をこなすだけではなく、会社の存在意義から逆算して提案し、業務を改善することが大切です。

そして伝える段階では、同じく会社の存在意義から逆算して、発言しましょう。そうすることで、受け手は同じゴールを共有でき、あなたの発言に対する理解も深まります。

このように、個々の従業員が企業の存在価値を実際の行動として具現化することで、どのチャネルから見られても、一貫性あるブランドイメージの醸成が可能になり、共感を呼ぶのです。

企業も個人も同じ まずは自分の強みを棚卸する

パーパスから逆算した自社および自分のコンテンツをつくる場合、まず、それぞれの強みを知ることから始めましょう。分かりやすい強みを特徴として伝えていくことで、受け手に御社やあなたを選ぶべき合理的な理由をつくります。

まず強みを知るためには、棚卸をしてみましょう。その手法として、会社レベルでは、主に3つの観点があります。ひとつ目は商品・サービスの強み。自社の商品・サービスの技術や、こだわり、開発秘話などが強みになり得ます。2つ目は人の強み。創業者や社長以外にも、多種多様な人材の強みがあるはずです。

例えば、30年以上ノウハウを磨き上げてきた職人だったり、全国津々浦々訪問を繰り返し、全国レベルの強力なネットワークを持つ営業のスペシャリストだったりといった感じです。3つ目は組織の強み。オペレーションやイノベーション(課題解決)が生まれる仕組みなど、自社ならではの組織の強みを探します。

また個人レベルでは、自分を商品に例えてみましょう。色々な観点が考えられますので、ここでは限定しませんが、例えば自分の目標も強みになり得ます。何を目指しているのかを明確にして発信している人は、サポートが得られやすくなります。私自身もパーパス・ブランディングを広げていきたいという目標を持ち、様々な人に話をしてきました。すると、思いがけずパーパス・ブランディングについてサポートしてほしいという企業を人から紹介されたりすることがしばしばあります。

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