2021年3月、ADKグループはデジタル&データドリブン・マーケティングを専門領域とする新事業ブランド「ADK CONNECT」の始動を発表した。ADKグループが有するデジタル&データドリブン・マーケティングに関わるソリューションを専門とする多様なスペシャリストを結集させ、多様化する顧客のニーズに応える構想だ。代表取締役社長 グループCEOの植野伸一氏に、その狙いを聞いた。
すべての人に歓びの体験を提供 ADKの社会における価値を定義
私は2013年に社長に就任した際、新しいADKの事業ビジョンとして「コンシューマー・アクティベーション」を掲げました。これは、消費者の行動を喚起し、認知獲得だけでなく広告主の成果目標に貢献することを目指したものです。それから時間も経ち、ビジネス環境や消費者の生活環境は大きく変化しました。そこでもう一度我々の事業ビジョンやADKという企業グループの存在意義を明確にする必要があると考えました。そこで2020年に「すべての人に歓びの体験を」というパーパスを設定しました。
人々の生活のあらゆる場面で価値ある歓びの体験を提供することに、これからの広告会社の役割があるのではないか。そして、この構想はADKの独創的なアイデア、外部パートナーとの連携も含めて提供しうる革新的なテクノロジーを融合するからこそ実現できると考えました。「コンシューマー・アクティベーション」はクライアントに対して提供しうる価値を明文化したものでした。それに対して、今回のパーパスでは社会に対して我々がどのような存在意義があるかを提示したいという思いで策定しました。
また、パーパスと同時に「顧客を資本と考える顧客体験創造会社」という事業ビジョンを策定しました。これは「顧客こそが事業の持続的な成長を可能にする資本そのもの」という考え方に立つもので、これまでの「消費者を動かす」成果志向の統合型マーケティング(コンシューマー・アクティベーション)からさらに進化。「顧客を創り、育てる」顧客創造型のマーケティング会社を目指すことを宣言したものです。
「顧客を資本と考える顧客体験創造会社」は一見平易な言葉ですが、一番大きなポイントなのではないかと思っています。今までの我々のビジネスは、不特定多数の方々を対象に、広告を通して、ブランドや商品を知ってもらい、商品を購入していただく支援をしてきました。それはある意味、投網をかけるようなコミュニケーションだったと思います。
しかし、今のクライアントの皆さまが望んでいるのは、その先。幅広い人たちへのコミュニケーションを通じて、興味や購買意欲を引き出すだけでなく、商品を知って、購入していただいた方に、その商品をより好きになっていただき、ファンとなり、さらにリピート購入していただく。あるいはSNS等を通じて良さを知らせて周囲に影響を与えていただく。つまりは顧客を育成することだと考えました。そして、こうした構想はデータドリブン・マーケティングを実践してきたからこそ見えた可能性です。
我々は従来の獲得型のマーケティングを否定するわけではありません。それをより精緻化しつつ、購入していただいた方を顧客化する育成型マーケティングと融合させることが、我々が掲げる方針です。この統合型の戦略実施を通じ、「顧客を資本と考える顧客体験創造会社」に昇華させていきたいと考えています。
DXの急速な進展に応える「ADK CONNECT」
このような考えの中で、当社では新たな事業ブランド「ADK CONNECT」を立ち上げました。従来から当社では、従業員の専門性向上を図るため、ホールディングスの傘下に各専門分化した会社を置く、持株会社体制を構築してきました。今回、始動する「ADKCONNECT」は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の急速な進展に伴って変わるマーケティングのニーズに応えることを目的にしています。
「ADK CONNECT」には、ADKマーケティング・ソリューションズの実績豊富なメンバーに加え、外部から大手広告会社のみならず、事業会社のデジタル部門などから、メディア、デジタルソリューションなどDXを担うプロフェッショナル人材が集結しています。
「ADK CONNECT」の目的は、高精度の顧客獲得マーケティングに加えて、ブランドと顧客との直接接点で顧客を深く理解し、魅力的な体験を一貫して提供し続けることにあります。
その実現のため ①主に顧客獲得を目的とする、進化型マスマーケティング領域 ②主に顧客維持・育成を目的とするD2C(Directto Consumer)型マーケティング領域 ③フルファネルでの顧客体験デザイン領域の3つをグループ事業の柱に据え、それぞれにおいてデジタル&データドリブン・マーケティングにおける専門性を発揮し、戦略的なソリューションを開発・提供するミッションを担います。
最大の特長は、これらのサービスがワンルーフ(ひとつの組織)で提供できることにあります。
以前から構想としてはあったのですが、今回、コロナ禍により実現・発表が早まりました。生活者の生活そのものの価値観が次々と変わる中、我々も大きな変化を遂げることとなったのです。そういう意味では、コロナ禍は我々の動きを加速させるひとつのきっかけになったと思います。
クライアントと時間を共有し「伴走型」のスタイルを構築
当社は12月決算で、1月から新しいスタートを切りました。今年度は「顧客資本マネジメント」モデルの具現化が最大の課題だと思っています。このモデルでは、クライアントと伴走する仕事のスタイルになっていきます。これまで以上にクライアントのビジネスの成果に貢献することを目標に、クライアントと時間を共有しながら顧客の開拓から育成までサポートしていきたいと考えます。
「顧客資本」という観点で見れば、単年度の売上だけではなく、長期で見たときに「顧客資本」を棄損するようなブランドのコンディションになっていないかどうかの日々の把握も必要です。
もちろんクライアントの状況によっては、足元の短期的な数字をとにかく上げるという課題が重要な時も当然あるでしょう。そうした目標と、中期的に安定的な成長拡大が重要な場面は必ずあるはずですから、両方の課題に対して応えられるようなパートナーになっていきたいと考えています。
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株式会社ADKホールディングス
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