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国語学の視点

薬師丸ひろ子の博士役が画期的な理由

金水 敏氏(大阪大学)

現実とのギャップが大きいステレオタイプなキャラクター

のっけから自著の宣伝めいて申し訳ないが、『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003年刊)は「博士は〈博士語〉をしゃべるか?」という章から始まる。1952年に連載を開始した『鉄腕アトム』(手塚治虫)というマンガに登場する「お茶の水博士」というキャラクターが、「親じゃと? わしはアトムの親代わりになっとるわい」のように、「じゃ」「わし」「~わい」「~ん(否定)」等の要素によって構成される、〈老人語〉と名付けられた話し方をする、という話題である。

マンガやアニメにはこの手の〈老人語〉を話す“老博士”が頻繁に登場し、主人公の登場人物に秘密兵器を手渡して勇気づけたり、あるいは悪玉のボスとして主人公を苦しめたりする。そしてこの“老博士”キャラクターは、広告の世界でも大活躍している。そのことを直感的に確かめる方法として、Googleの画像検索で「博士 フリー素材」と入力してみていただきたい。白衣着用、白髪ないしはげ頭、白ひげタイプの博士がいっぱい出てくるだろう。大学教授がかぶるモルタル帽や、メガネの着用率も高いし、さし棒を持っている博士も多いことに気づく。

これらのイラストは何に使われるかというと、広告媒体や説明・告知文書にぺたっと貼り付けて、「ここがポイントじゃ」などと...

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