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社会学の視点

なぜ人は、『鬼滅の刃』で泣くのか?

遠藤 薫氏(学習院大学)

人々の心を動かした「正しいマーケティング」とは

2020年、『鬼滅の刃』という物語が日本を席巻した。

私も、コミック、映画、アニメすべてを見た。きっかけは、大震災の年に生まれた孫が映画館で泣いたと聞いたことだった。なぜ泣いたのか聞いていない。しかし、実際に私が行った映画館でも、多くの観客がぼろぼろ泣いていた。平日の昼だったので、観客はすべて成人だった。若い層と中高年層が7対3くらいの割合、女性と男性がやはり6対4くらいの割合だった(あくまで個人的に暗がりでざっと観察したレベル)。私自身、その後、オフィシャルな会議に出席予定で、その時ほどマスクを有難いと思ったことはなかった。

なぜ、この映画はこんなに人を泣かせるのだろう。なぜ次々と記録を塗り替えるほど人々を惹きつけるのだろう?もちろん、よく練られたマーケティング、メディアミックス戦略があったことは多くの人が語っている。しかしそれだけでは、この万人向けとはいえないストーリーがこれほどひろく受け容れられることはなかっただろう。

物語は、大正期、山奥で肩を寄せ合うように暮らしている炭焼きの家族が、突然襲ってきた鬼たちによって惨殺されるところから始まる。ひとり生き残った少年・炭治郎が、生き残りはしたものの鬼になってしまった...

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