離れている間も、パルコを忘れないで ライブコマースで国外にも積極発信
国内のみならず、海外のインフルエンサーなどを使った施策で訪日外国人客による売上も伸ばしてきたパルコ。訪日外国人による消費が見込めない現在において、同社はどのような考えのもと、施策を実行しているのか。営業政策部 課長の山口豪氏に聞いた。
アイデアでコロナ鎖国を乗り越える!
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い入国制限措置がとられるなど、海外からの旅行客が見込めない状況が続いている日本。コロナ禍での海外の顧客に対するビジネスの現状を、日本貿易振興機構(ジェトロ)の古川祐氏が解説する。
◆ 2019年はひとり15万円もの消費が見込めた訪日外国人市場。
◆ 化粧品の輸出額はコロナ禍で12.3%伸長。
◆ 海外への積極的な発信が新たな展開をもたらす。
近年、増加し続けていた訪日外国人旅行者数は、2019年に過去最高の年間約3,188万人を記録しました(出所:日本政府観光局(JNTO))。
一方で、2020年1~11月(執筆時点で最新)は前年同期比86.2%減の約406万人(推定値)に。特に新型コロナウイルス感染拡大後の2020年4月以降は毎月のように、前年同月比99.9%減、もしくはそれに近い減少率が続いています。
訪日外国人旅行者数がほぼ皆無になったことで、それまで国内各地で盛り上がっていたインバウンド需要が一気に消滅してしまいました。
インバウンド需要としては、訪日外国人が訪日中に消費する、飲食・宿泊、移動、「コト消費」や娯楽等のサービス、土産の買い物などがあります。その多くは訪日しないと受けられないサービスですが、買い物については必ずしも日本に来なくても、現地店舗で購入、あるいは日本から輸入することで入手できる商品があります。
観光庁によりますと、新型コロナ感染拡大前の2019年において、買い物代は訪日外国人ひとり1回あたりの旅行消費額で最大の支出費目になっており、買い物代の中で最も支出されている品目が化粧品・香水です。特に国・地域別の訪日外国人旅行者数で最大の中国の同品目の構成比は、旅行消費額全体の2割を占めており、全国籍・地域(同9.1%)と比べても突出して大きいです(図表1)。
訪日外国人による化粧品消費額は、新型コロナ感染拡大により突如として消滅しましたが、その時期の日本からの化粧品の輸出額に影響が出ていたのかどうかについて調べてみました。
日本の化粧品の貿易額の推移をみますと、輸出は2016年まで概ね緩やかに伸びていますが、輸入額を下回っていました(図表2)。そして、2017年に輸出額が輸入額を上回り、2019年まで急増しています。輸出を国・地域別にみますと、特に中国、香港、その他(韓国、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムなど)が輸出を押し上げています。
中国や東南アジアなどに向けての輸出増の背景には、現地消費者の美容に対する意識の高まり・定着、現地企業との提携も含めた日系ドラッグストアなどの現地での店舗展開や越境EC販売による日本のコスメブランドの認知度向上が挙げられます。また、一部の国(※)においては、日本からの化粧品の輸入関税率が年々下がってきたことが、現地での価格競争力向上に追い風となっているとも言えるでしょう。
そして、訪日外国人旅行者数の増加も大きく貢献しています。訪日中に実際に日本の化粧品に触れ、帰国時に土産として持ち帰る訪日外国人旅行者数が増加すれば、その品質・効能のよさを知っている消費者が現地に増えることにもなります。もちろん化粧品は消耗品ですので、日本のコスメブランドびいきの「優良な」消費者は帰国後も、それぞれがお気に入りの日本の化粧品を、現地店舗や日本からの越境ECにより再び購入する、という好循環を生み出しています。
また、その化粧品の体験をSNS等の口コミで、将来の「優良な」消費者にインプットすることも忘れません。
新型コロナの影響により訪日外国人旅行者数が激減した2020年1~11月(執筆時点で最新)の日本の化粧品の輸出額は前年同期よりも大きいだけでなく、すでに2019年(年間)の輸出額を...