コロナ禍においてVOD(Video On Demand)サービスの利用者数が増加するなか、放送局はどのような方向に進むべきか。VOD・放送同時配信などビジネス領域の拡大を放送局に提言してきた、メディアストラテジストの塚本幹夫氏が解説する。
わずか1年で200万人増加 コロナ禍で躍進するネトフリ
昨年9月、日本でのサービス開始から5年を迎えたNetflixがオンライン会見を開き、国内の有料会員数が500万人を突破したと発表した。前年同月が300万人だったので、わずか1年で200万人以上会員を増やしたことになる。2億人弱という世界中の会員数からすれば大した数ではないが、何がすごいかというと、これが衛星有料放送の契約者数(WOWOW:約278万、スカパー:約309万/2020年12月時点)を遥かに越えてしまったことだ。
さらに言えば、何十年も苦労して獲得した契約者数に近い数字を、たった1年で達成している。日本では地上波の無料広告型サービスが強力で、長年これを脅かす仕組みは登場してこなかったが、明らかにこの1年で地殻変動が起きている。
会員数だけではメディア視聴の変化はわからない。日本では動画視聴は圧倒的にスマートフォンが多いので、スマホアプリのアクティブユーザーの推移がトレンドを推し量るのに便利である。フラーが手掛けるアプリ分析プラットフォーム「App Ape」のデータによると、緊急事態宣言で全国の学校が一斉休校となった2月下旬からゴールデンウィークにかけて、国内主要SVOD(Subscription Video on Demand)サービスアプリのWAU(週間アクティブユーザー)は急激に増加【図表1】。夏から秋にかけて一旦落ち着いたものの、年末再び急増した。
特にAmazonプライム・ビデオやNetflixの増え方が激しい。この両社は、国内・海外を問わず多額の費用を投じて製作した本格的なコンテンツを数多く提供しており、それがSNSやネットメディア上で話題となった。さらに優れたリコメンドシステムによりユーザーの視聴を獲得している。
一方、AVOD(Advertising Video On Demand)アプリについては、YouTubeのアクセス数が圧倒的。しかしTVerはドラマの製作・放送が再開した6月から確実に伸長した。サービス主体がそれまでのキー局による協議体から会社となり、資本増強した成果もあるだろうが、SVODと同様、お金をかけた本格ドラマやバラエティ番組が、このコロナ禍において視聴の機会を増やしたと考えていいだろう。
前述の通り、日本では動画配信はスマホによる...