フランス人との対話のコツ── フット・イン・ザ・ドアで乗り越える
ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。
フランス消費トレンド
ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。
欧州の食品スーパー業界で売上3位(2018年)を誇るドイツ発のディスカウントスーパーAldiをご存じでしょうか。販売する商品の9割以上をPB品で揃え、店頭装飾や広告宣伝も最小限に抑えるなど徹底したローコストオペレーションで低価格・高品質を実現しているハードディスカウンターです。日本では馴染みがないですが、同社グループは世界19カ国で1万店以上を展開し、アメリカでは小売業界最大手で「Every Day Low Price(毎日低価格)」を理念に掲げる米Walmartが警戒するほど存在感を高めています。
欧州を席巻するAldiですが、フランスでは売上9位、シェア2.3%(2019年実績、英Kantar Worldpanel)と伸び悩んでいます。この背景にはフランスの小売が歴史的に強いということがありますが、安値訴求だけではなびかない市場特性(Aldiの品質訴求が不十分)もあります。こうした事情を踏まえ、同社が昨年末に展開したCMがフランスの消費者心理を突いたものでしたので、今月はそのクリエイティブをご紹介します。
Aldiが展開したCMのコンセプトは「本当のクリスマスサプライズ」。松竹梅で価格が異なるフォアグラ3種(€13.99、€20.99、€28.79)を消費者パネルに食べ比べてもらい(ブラインドテスト)、その様子が映像化されています。パネルにはそれぞれの価格情報のみが伝えられ、松竹梅それぞれの試食が行われました。
パネルは最安の梅(€13.99)を「食感が悪くない」「味も良い」と評価し、続いて中間価格の竹(€20.99)は「より栄養価が高く本格的だ」ともっともらしい感想を述べます。そして、最後に試食した高額な松(€28.79=梅の値段の2倍)については「値段が高いだけあってこちらの方が美味しい」と高く評価しました。つまり、値段と評価が比例する結果でした(パネル10名中7名が同様の回答傾向)。
ところが、実は試食したフォアグラ3種はどれもが最安の梅(€13.99)でAldiの取扱商品でした。この事実が明かされると、パネルは苦笑いしながら「自分の味覚を信じてたんだけど」と述べ、最後に...