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社会学の視点

お正月という「セカイ系」マーケティング

遠藤 薫氏(学習院大学)

社会の変化がビジネスに 自分ゴトとして没入するしくみ

明けましておめでとうございます。今年が良い年となりますように…というような願いごとを、日本人の多くは年初に祈る。そのために御利益のありそうな神社にお参りする。明治神宮や伊勢神宮、川崎大師などは、三が日に何十万もの人が参詣に訪れて、テレビで賑々しく報じられる。いわゆる初詣である。

もっともこの初詣という行事、必ずしも日本古来の伝統行事でもないらしい。歴史家の平山昇氏(『初詣の社会史』、東京大学出版会)によれば、明治以降、新年の祈りを神に捧げる風習が、信仰中心のものから、ちょっとした行楽気分へと変化した。それを後押ししたのが、鉄道網の発展だという。日本初の鉄道は、新橋と横浜を結ぶ東海道線。これで行きやすくなった川崎大師が、一躍初詣客を集めることになったそうだ。その後次々と鉄道が敷かれ、沿線の神社が集客力を高め、鉄道側もまた「そうだ、初詣行こう」的キャンペーンで乗客を増やした。

社会の変化と新しいビジネスとを「日本ぽさ」を媒介に結びつけた「クニ系」マーケティングの勝利である。

お正月をさらに親しみやすくするのが、「十二支」の風習だ。もともとは十二年周期の各年に12の文字を割当てたのだが、さらにその各文字を...

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