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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

背後の商品「ストーリー」、世界観を表現する商品ネーミングの考え方

こやま淳子氏(コピーライター/クリエイティブディレクター)

    ネーミングの極意

  • 比較的長く使うものでも時代性は考慮する。
  • 商品の機能ではなく、世界観を伝える。
  • オリエンでは、企業側にしか語れない「商品ストーリー」を伝える。

ネーミングで時代がわかる? トレンドが反映される商品名

商品のネーミングは、比較的長く使用されるクリエイティブに分類されます。発売してから数年、ときに数十年後もその商品・サービス名が使われるのは珍しいことではないからです。見出しで「ネーミングで時代がわかる?」と述べていますが、まずは少し前の日本から現在までのネーミングの特徴について振り返ってみたいと思います。

昔、ネーミングの仕事がとても得意だという先輩がいました。その先輩は「多国語辞典」を愛用していて、ネーミングの仕事が来ると「まずその商品を表す言葉のさまざまな国の言語を調べ、それをアレンジしていくのだ」と語っていました。確かにその頃の日本にはフランス語やラテン語、さらにはどこの言語かわからないようなネーミングが溢れかえっていたように思います。

しかし、ここ最近のネーミングのトレンドを考えてみると、印象に残るネーミングは圧倒的に日本語が多いのではないでしょうか。

例えばコカ・コーラさんの「檸檬堂」、大日本除虫菊さんの「ゴキブリムエンダー」、マーナさんのエコバッグ「Shupatto」などが主な例です。2020年のヒット番付をみても、そんな日本語を元にした名前の商品が目につきます。ちなみに私がネーミングを手掛けたライオンさんのボディソープ「hadakara」も、「肌から日本を美しく」という日本語をベースに制作していますし、丸紅さんの豚肉である「紅雪」も、花王さんの柔軟剤「IROKA」も日本語から着想を得てつくったものでした。

こうした変化の背景には、外来語にかっこよさを感じていた時代から、社会全体が日本の良さを見直すようになってきたという流れもあるでしょう。さらには、似たようなスペックの商品がどんどん増え、差別化が難しくなっているなかで、名前からパッと何かわかってほしいという市場の訴求ポイントの変化も、ひとつの理由として考えられるかもしれません。

また、日本語ではないにしても、「note」や「Zoom」など、誰にでもわかるような簡単な英単語をそのまま名前にしているパターンも、このところよく見るように思います。ネーミングは、商標を取ることがなかなか難しいという事情もあり、いかに造語にするか、いかに言葉と言葉を組み合わせておもしろい文字列を考えるかということが、これまでは重要だったはずです。

例えば、spring(春)、summer(夏)、autumn(秋)、winter(冬)の頭文字を合わせて「SSAWS(ザウス)」にしたという屋内スキー場のネーミングなどが有名な例でしょう。しかし、「note」や「Zoom」は造語にするどころか、既存の単語をそのまま使用しています。新しいカテゴリーのものだから商標が取れたのか、それとも商標は取れなくてもいいと思っているのか、いずれにしても昔であれば「もっとちゃんと考えろ」と怒られそうなシンプルな名前です。

しかし、その「何にもしてない感じ」が今っぽく感じられたりするのですから、ネーミングは比較的長く使うクリエイティブであるとはいえ、やはり時代性を無視することはできないものなのだと思います。

トレンド以上に大切 売り場で目立つための表現

時代性やトレンドというものは、もちろん時代によって移り変わるものです。さらに言えば、それらは商品・サービスの分野によっても違うものなので、一概に「現代のトレンドはこのようなもの」とは言いきれないのが難しいところです。

例えば、「hadakara」の場合は、競合他社の商品が、「ビオレ」や「ダヴ」と言った外来語風の短い(音にすると2文字か3文字の)名前だったことから、その差別化もあって選ばれたようにも思います。

その商品がどのような売り場に並ぶのか。その売り場で、どう目立たせていきたいのかという戦略は、トレンド以上に大切な要素かもしれません。

ちなみに、私自身の仕事でも、ここ最近はネーミング開発の依頼が増えています。その理由はオンラインでの販売チャネルが拡大し、以前よりも商品を発売しやすい環境に変化したこと、それによって、他の商品との差別化を図るべく、よりパッケージや名前などの重要性が増し、企業が古い商品をリニューアルするなどの機会が増えたこと、などが理由として考えられるでしょうか。

その上で、前述したようなとてもシンプルでわかりやすいネーミングが増えている一方、そのネーミングに込められた「ストーリー」の大切さも高まっているように思います。店頭では語られることも、興味を持たれることもなかった企業の思想が、インターネット時代には重要になってきたからです。その商品を取り巻く表現すべてが、企業の考え方を表す「顔」だと考えて開発することが大切になっているのではないでしょうか。

図1 良いパッケージが持つ3つの特長
良いパッケージとは、「時代性」「目立たせ方」「ストーリー」の3つのバランスがしっかりとれているもの。

名前は商品の機能ではなく世界観を伝えていくもの

ネーミング開発の際...

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