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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

ブランドとの最初の接点 思わず手に取りたくなるパッケージデザインとは?

吉永 三恵氏(日本デザインセンター)

    パッケージデザインの極意

  • 商品が飽和状態の陳列棚で、良い意味の“違和感”を持たせる。
  • パッケージはブランドファン創出の「入口」であると考えながらデザインする。
  • オリエンでは概要、開発理由、訴求ポイントなどの「商品ストーリー」を伝える。

良い意味での“違和感”で陳列棚での差別化を図る

スーパーマーケットやコンビニエンスストア、量販店などで売られる商品の多くは、中身もパッケージのクオリティもよく似ていて、商品の違いが一目でわかりづらいようなものが多くなっています。もはや“飽和状態”とも言える陳列棚で、差別性に優れていて、その商品価値がしっかりと伝わってくるパッケージデザインとは、良い意味で“違和感”のあるものです。他の商品との差別化が図れており、かつインパクトのあるパッケージは、もちろん多くの消費者に手にとってもらえる回数も増えていきます。

そんなパッケージが売り場に陳列されていれば、私も一度は手に取って、目で眺めて、そしてついつい買ってしまいます。

周知のとおり、商品パッケージのほとんどは、人が手で持てる程度の大きさになっています。そんな小さなフレームの中で、商品内容の情報のすべてを伝えるのは、大変難しいことです。パッケージに掲載する情報をキュレーションする際、パッケージ以外の他の媒体で発信される情報も一緒に考えられていると、パッケージの役割や、そこで表現すべき内容も自ずと整理されてきます。

ある商品に対して伝えたいことがたくさんあるというマーケターの気持ちももちろん理解できますが、視覚的な情報が多すぎると、本来伝えるべき情報が伝わらず、売り場での存在感が薄れてしまうこともしばしばです。どんなに優れた商品でも、消費者に手に取ってもらえないと意味がありません。

ファーストインプレッションという点では、パッケージだけでなく、商品のネーミングもとても大切な要素となります。抽象的なもの、思わずよだれが出そうなシズル感たっぷりなもの、文章として読ませるものなど多様ですが、瞬時に商品の特長が伝わるようなインパクトのあるネーミングの商品なども、気になってつい手に取ってみたくなります。

特に健康志向系の商品、特定保健用食品や機能性表示食品、サプリメントなど、消費者に伝える内容が多い商品においては、最も大切な訴求ポイントをコピーでうまく表現し、価値を上手に伝えているパッケージが多いと感じます。

最近は、店頭での購入意思決定に際して、必ずしも価格だけで選ばれるという傾向は減っているようです。

消費者の商品を見極める目利き力が高まったことで、決して安価であれば良いというわけではなくなりつつあります。消費者の価値観が、自分の生活・意識にあったものを選び、「買いたい・買う理由」があれば高価なものでも購入するというものに少しずつ変化してきているのです。

現在のコロナ禍の状況では、よりターゲットを絞ったユースフルな商品など、ベネフィットを明確にしたパッケージが増えていくのかもしれません。

また環境問題への配慮として、商品パッケージを素材から考えていくことも、“差別性”という点において他社との変化をつけやすくなるはずです。新しい素材に変えてみたり、より使いやすい形状の開発に注力してみたり。表面上だけでなく、トータルで考えられたパッケージが大切になっていくでしょう。

パッケージが担う役割はブランドのファンをつくる「入口」

消費者にとってパッケージは、その商品と企業との最初の接点となるものです。私の場合、パッケージデザインには商品を通じて企業やブランドのファンをつくる「入口」のような役割があると考えながらデザインするようにしています。

図1】の流れが完成するためのファーストステップになるものこそが商品パッケージなのです。

図1 ファーストタッチからファン創出までのフロー

目新しいパッケージが功を奏して、お客さまに購入してもらえたとしても、中身や機能面も含め、コンセプトがパッケージデザインと合致しないと、消費者はリピーターにはなってくれません。ブランドコンセプトがしっかりしており、かつ消費者に向けたメッセージとパッケージデザインが噛み合っていると、とても“強い”商品に成長します。

環境問題への配慮もそうですが、近年、今までよりもパッケージの背後にある企業姿勢やストーリーが求められるようになってきました。商品の顔となるパッケージでは、一番伝えたいことが伝わるような表現を追求していくこと、容器などの外装も含めトータルに対応していくことが大切です。

さらに、今はSNSの活用により、ユーザーターゲットに合わせた情報発信を行えるようになりましたが、逆に、消費者の興味・関心もインプットすることができます。流行やトレンドの移り変わりが激しい今、「何が有益な情報なのか」を見極めることは難しいですが、そこは制作する側のアンテナを信じ、細やかな戦略のもと、パッケージと連動したコミュニケーションを図れるよう、分野を問わずさまざまなジャンルのものにふれておくことも必要です。

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