開催が1年延期となった「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」。ゴールドパートナー企業は、この延期期間をどのようにポジティブに活用しようと考えているのだろうか。三井不動産 広報部 ブランド・マネジメントグループ グループ長の鶴海哲也氏に、ゴールドパートナー企業の1社であるNECの山本啓一朗氏が聞き手となり、話を聞く(本文中・敬称略)。
山本:東京2020のゴールドパートナーになった経緯を教えてください。
鶴海:東京2020は、東京そして日本の魅力を世界に発信する絶好の機会。街づくりに力を入れてきた企業として、参画することに迷いはありませんでした。東京ミッドタウン日比谷や渋谷・宮下公園の再開発など2020年に向けた開発ロードマップもできていて、当社の街づくりをショーケースとして発信する絶好のタイミングだったのです。
ただ、当社のような総合デベロッパーという業態でオリパラのパートナーになった事例はこれまでになく、まずはカテゴリーの開発から行うことになりました。
山本:“不動産開発”というカテゴリーそのものがイノベーションだったんですね。NECの“パブリックセーフティ”カテゴリーと同じですね。新しいカテゴリーの定義には時間がかかったのではないでしょうか。
鶴海:カテゴリー内に当社の幅広い事業すべてを包摂できるわけではないので、確かに調整は大変でしたね。
山本:NECも同様です。“生体認証/顔認証”や“パブリックセーフティ”を生業としている部門はグループ全体で見ると限られています。名刺へのエンブレム掲載なども活用できる部門が明確に定義されています。そういった意味で、全社で活用できないのでは?という声もありました。
鶴海:それでも私たちは、コーポレートブランド価値の向上を実現するための強力なエンジンだと考えていました。当社では東京2020を通じたブランド価値向上を次の3つの方法で実現しようと考えています。
1つ目は、東京・日本に世界中の注目が集まるなか、当社が携わる様々な街を多くの方に認知・体感いただくこと。その機会を通じて、伝統文化やおもてなし、安心安全など東京・日本の魅力を世界に発信したいと思っています。
2つ目は、当社が関わる場を活用し、街に集う人々とアスリート、組織委員会やゴールドパートナー企業の皆さんをつなぐこと。一緒になって、オリパラ機運の盛り上げと大会の成功に貢献したいと考えています。
3つ目がスポーツの力を活用した街づくり。健康増進はもちろん、スポーツは人と人とのつながりを生み出し、街のコミュニティを活性化させます。それを“街づくりレガシー”として未来に継承していきたいですね。
山本:三井不動産のコーポレートブランドはすでに確立されていると思うのですが、それでもブランディングが必要なのでしょうか。
鶴海:三井不動産に対して、伝統、安心感、信頼感といったイメージをお持ちの方は多く、それが当社のブランドイメージの基盤となっているのは確かです。ただ、当社が幅広く展開する施設や事業、例えば商業施設の認知度が高くても、それを...