コロナ禍の影響でオンラインシフトが加速するなか、日本の製造業はどのような戦略を組み立てればよいのか。全7回の連載の最終回では、日本の製造業が加速するオンラインシフトをどう生かすか、その方策を解説していく。
いまだ世界に浸透する日本製に対する信頼
新型コロナウイルス感染症の影響により、人々のなかに地元経済をサポートする気持ちが芽生え、ローカルブランドを購入する機会が増えているのではないかという考察がある。世界的に見て、一時的にとはいえ地元産の商品が買われたのは事実だろう。
しかし日本企業にとってはグローバリゼーションを止めるわけにはいかない。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに下降傾向だ。今回のオンラインシフトで生活者はますます世界中から商品を購入できる状態になった。そう考えれば、ウィズ・アフターコロナは世界中の企業が競争相手となるといえる。
日本企業が世界で戦うためのヒントが品質である。シンガポールで生活をしていると日本製品に対する信頼が非常に高いことが伝わってくる。シンガポールだけでなく、ASEANの生活者に調査をすれば、日本製と聞くだけで、良いモノだという回答が返ってくるものだ。ハードウェアの品質の高さという点は、今なお日本が世界と戦える、もしくは他の国ではなかなか実現できない日本の強みと言えるのではないか。
一方、世界はハードウェアよりもソフトウェアに目を向けている。シリコンバレーの投資家と話をしても、「ハードウェアを扱うスタートアップにはなかなか投資はできない。基本的にはソフトウェアを手掛けているところに投資する」と言う。それでは日本も同様にソフトウェア開発に傾注していくべきなのかというと疑問が生じる。アメリカには日本とは比べ物にならないくらいの莫大な資金を初期段階の企業に投資できる環境が整っていて、お金の力で一気にソフトウェアを広め勝者総どりしていく力があるからだ。
ソフトウェアはオンラインネットワークを通じて、一夜にして地球全体に広がり、翌日には中国でその商標が登録されている。さらに“チャイナスピード”で、そのソフトウェアを中国市場にあったものにリアプライして早々にローンチしてしまう。そんな状況に日本企業が参戦しても、資金に限りがあり、国民性として合意志向のため意思決定に時間を要する日本には、なかなか勝ち目がないのではないか。
一方でハードウェアに関しては品質という点でチャンスがある。世界中が今オンラインシフトするのに伴い、デジタル化に取り組もうとしているが、デジタル化できないものは今後も存在する。それにより、デジタル化できないものの価値が向上するだろう。日本のクラフトマンシップは、そのデジタル化できない部分をカバーできるのではないかと考える。
ビヨンドプロダクトではなくグレートプロダクト
本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏は「世界市場においては、製品というものは正直なものだ。製品にはメーカーの思想が、そのまま表現されている。誇大な宣伝も、言いわけめいたPRも、なんの助けにもならぬ。なぜなら...