実在の企業が提示する課題について広告コピーのアイデアを競い合う「宣伝会議賞」では、審査員が選ぶ各賞だけでなく、協賛企業各社が選ぶ「協賛企業賞」も存在しています。協賛企業が提示する課題に本気で取り組む受賞者はどのようにアイデアを考え、企業担当者は、どのように作品を選定しているのでしょうか。10年以上「宣伝会議賞」に協賛しているセメダインの篠原泉さんと、第57回のセメダインの課題で協賛企業賞を受賞した電通の大澤希美恵さんに話を聞きました。
10年以上、協賛を続ける理由は“新鮮な気づき”が欲しいから
──セメダインさんは10年以上も連続して「宣伝会議賞」に協賛いただいています。
篠原:私たちの会社や商品が、世間からどのようなイメージを持たれているのかを知ることができるのが、協賛を続ける一番の理由です。私たちは日々、自社商品のことを考えていますが、「宣伝会議賞」の応募者の方々は、社員とは違う目線で商品や企業の魅力を見つけてくれます。毎年続けていても、いつも新鮮な気づきが見つかるので、そこに協賛を続ける理由がありますね。毎年、何万人もの応募者の方々が私たちの企業のためにアイデアを考えてくれることもありがたいです。
──大澤さんはセメダインの課題で、第57回の協賛企業賞を受賞しました。
大澤:私が受賞した第57回で、セメダインさんが課題として出していたのが「靴補修材」です。アイデアを出すため、通勤途中の人間観察にはじまり、家にいる時は家族の様子を見て、靴にまつわる“気づき”を得ようとしていました。
課題に取り組む中で靴補修材の魅力を知ることになったのですが、それまで、靴は“消耗品”というイメージを持っていました。でも、ケアをすれば、もっと長く使用できるものだと気がついたのです。その自分の気づきを表現したのが「父親の靴を直したら、翌朝、嬉しそうな足音がした。」という受賞作品でした。プレゼントとして靴を贈ることはありますが、「補修材で修理する」という“アクション”を贈ることもできるのではないか。そんな提案をコピーに込めました。
篠原:「誰か」に対する愛情が表現された大澤さんの作品は、私もとても気に入っています。協賛の理由として、新鮮な気づきを見つけられるとの話をしましたが、私たちは大澤さんの作品に触れるまで、靴補修は“誰かのため”ではなく、“自分のため”のものだと勝手に思い込んでしまっていたのです。まさに、私たちにとって...