ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。
間違いも含めて可視化する ボールペンで学ぶフランス人
「幼少期の教育が人間形成の基礎を培う」とは、よく言われることですが、今回はそのことを象徴するようなフランス教育のエピソードをご紹介します。9月から現地の小学校に通い始める娘の学校から、新学期前に学用品の持ち物リストが送られてきました。
フランスでは小学生から主にボールペンを使い、高学年になると万年筆を使うと聞いてはいましたが、実際に持ち物リストの最初にボールペンが記されていました※。ボールペン9本(青緑赤)に対して鉛筆が2本と、まさにボールペン中心です。色には役割があり、青色でノートをとり、緑色で間違いを正し、赤色は先生が採点やコメントをするのに使います。
ノートやテストの答案で書き間違えたときは、修正具はあまり使わず、横線を引いて訂正します。ボールペンで書かれた内容は間違いも含めすべて可視化されるので、教師は生徒がどう考えたかという思考過程を確認することができ、的確な指導が行えるというのです。
また、フランスの試験は記述問題が中心で、解答の正誤だけでなく、そこに至った考え方も評価の対象となります。答えが間違っていても、ロジックが正しければ点数をもらえるため、ボールペンですべてを残す(=間違いを消さない)ことは生徒にとってもメリットがあります。人生は常に本番で、未来は変えられても過去をリセットすることはできないので、ボールペンの運用は人生の本質とも重なり、理にかなったものに見えます。
ひとつの正解を求める日本 フランスとの教育の違い
一方、日本の試験は多くの場合、正解はひとつです。鉛筆を使えば消しゴムで消して書き直せますが(=間違いをなかったことにできる)、この過程も「ひとつの正解」を意識させるもののように感じられます。不確実性・複雑性が増し、答えがひとつとは限らない現代社会に日本が対応する上で、もしかするとフランスの教育は参考になるかもしれません。
フランスの教育は「加点主義」、日本は「減点主義」と言い換えることもできます。興味深いことに...